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“老人向け”実話誌はなぜ売れる? 出版不況でも10万部の売上げ、創刊ラッシュ

アダルトネタが豊富な実話誌が好調

別冊ラバーズ ’19年8月末、コンビニからひっそりと「成人誌コーナー」が消えた。オリンピックを目前に控え、成人誌、いわゆる“エロ本”が街中いたるところで売られているのは体裁が悪いということで、コンビニが発売を自粛するようになった。この時はちょっとした騒動になったので、覚えている方も多いだろう。成人誌を数多く手がけてきた出版社の編集者に聞いた。 「もう、何年も前からコンビニ売りのエロ本は締め付けが厳しくなっていった。シールが貼られ、内容も過激なモノはNG。でも、週刊現代や週刊ポストだって『死ぬまでセックス特集』を企画すると売り上げが一気に上がるように、やっぱり男の娯楽の基本はエロなんですよ。  無修正動画特集や芸能人の濡れ場シーン特集をメイン企画に据えて、風俗情報を定番企画として掲載していたアサヒ芸能や週刊大衆は、コロナ禍においても売り上げを伸ばしてますから」  この編集者によると、成人誌が売られなくなったことにより、エロネタが多く掲載される実話誌と呼ばれるジャンルの雑誌が部数を伸ばしているという。週刊大衆、アサヒ芸能などの老舗実話誌に加え、新しく創刊・増刊された実話誌も好調な売り上げを誇っている。

出版不況でも10万部の売上げを誇る

 出版不況とは言われているが、実話誌業界は新創刊が続く。『実話ラヴァーズ』『実話ナックルズGOLD』『実話ネオヴィーナス』などが代表例だ。中でもダントツに売り上げを伸ばしている『実話ラヴァーズ』と『別冊実話ラヴァーズ』の編集長である比嘉健二氏に話を聞いた。 「実際、笑っちゃうくらい売れてるんだよね。俺がGON!とかナックルズを立ち上げた時代は、雑誌の売り上げは常に右肩上がりだった。だけど、ここ10年くらいは本当に厳しくてさ。創刊でパッと売れても次がめちゃくちゃ売れないなど波が激しかった。でも、実話ラヴァーズは創刊からずっと好調なんだよ」

ターゲットは郊外の老人

 創刊当時でも5万~6万部売れていたが、右肩上がりに部数を伸ばし今では10万部近くの実売を誇るという。だが、ネット全盛時代においてこうした雑誌を購入するのは一体、どんな人が買っているのだろうか。
老人

※写真はイメージです

「年齢層はかなり高いね。50歳だと断然若い(笑)。メインは60代後半~70代前半。80代もいるんじゃないかな。住んでいる地域は、群馬、茨城、埼玉などの関東圏、それから大阪、名古屋と都市圏の住宅街の人が多いね」  都市部でもオフィス街のような都心部だとさほど売れず、居住地域を中心に売れているという。 「実は今って、住宅街のコンビニは高齢者がメインのお客さんなんだよ。冷凍やチルドのお惣菜見てもわかるじゃない。ターゲットはファミリーではなく、一人暮らしや夫婦のみの高齢者なんだなって。ああいうのと一緒に、俺らが作る雑誌を買っているんだろうね。雑誌って、一度買えばしばらく楽しめるでしょ。それに、スマホと違ってバッテリーいらないし、テレビと違って風呂でもトイレでも持ち込めるしね」
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フリーライター。性風俗、女性問題、金融犯罪などを中心に執筆。未婚で1児を出産後、結婚。3児の母。愛人に走る女性をルポした『副業愛人』など著書多数。女性のお金や生活事情に関するルポ、詐欺事件を多く扱う。性とお金に対する欲望と向き合う人間をフィールドワークし、取材執筆を続けている。日本プロダクション協会の監事も勤めている

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