冬の“ボーナスなし”を喜ぶ人たちの理由。「嫁子どもの口撃が減る」
「今年は“惨めさ”を感じずに済むかと思うと気分が晴れ晴れしますね」
東京都内の中堅電機メーカー勤務・坂口真吾さん(40代・仮名)は、正社員がもらえる夏と冬、年二回の“ボーナス”を手にできない非正規雇用の契約社員という立場だ。
毎年ボーナスの時期には、正社員との格差を感じて憂鬱だったというが、今年は少し様子が異なる。当然、新型コロナの影響だ。ボーナスがもらえないのにうれしいとは、いったい、どういうことなのか。
「夏のボーナスもかなり下がりましたが、冬はついにゼロに。来年夏のボーナスも怪しく、部長級以上の管理職の手当もカット。毎回、勝ち誇ったような顔をしてボーナス後に飲みに誘ってくる正社員の連中も、今年は来ないでしょう。以前は本当に惨めな気分でしたからね、ボーナスの時期は」(坂口さん、以下同)
そう喜ぶ坂口さん。しかし、普段は「ほとんど正社員と同じ仕事をしている」契約社員には、ボーナスが支払われるべきだし、自身にもボーナスや退職金があってもよい、と考えていたのである。
「本来もらえるはずのものがもらえないのは悔しいですが、当たり前にもらっている連中がもらえないのは痛快。正社員が顔を青くしているのを見てスカッとしました。とはいえ、これ、私が損していることには変わらないし、会社がかたむけば我々の首も飛ぶわけで……」
冷静に考えてみれば経済状況の「ヤバさ」に気がつき、笑ってはいられないのも現実だ。
いや、それでも「ボーナスなし」がうれしいというのは、福岡県在住の建設作業員・岩本芳文さん(30代・仮名)だ。
「働き始めてこの方、ボーナスってものをもらったことがない。電気屋に行くとボーナス払い、ってあるでしょう? あれでモノ買ったこともない。息子が聞いてくるのよ。友達の家はボーナスで旅行に行った、テレビ買った。うちはボーナスで何買うの? ってね」(岩本さん)
事情を知らない息子からの詰問を今年は避けられるだけでなく、ボーナスなしをチクチク言ってくる嫁からの「口撃」もなさそうだと喜ぶ岩本さんだ。
「ボーナスなし」で溜飲が下がる
まわりも同じ状況なら嫁子供の口撃も減る
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