収入減に会社倒産、投資失敗……コロナを機に無一文となる人が後を絶たない。突然に訪れた無と絶望とはいかほどのものか。もはや他人事とは思えない、日本の現実をリポートする。「明日はわが身」かもしれない?
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今はリカバリーより、耐え忍ぶ時期
コロナ禍では富裕層から生活困窮層まで大打撃を受けたが、経済学者で明治大学政治経済学部准教授の飯田泰之氏はマクロ的には「今はリカバリーよりも我慢の時期」と指摘する。
「かつてFRBのパウエル議長が思い切った金融政策を行いましたが、あとは各国の財政出動いかんによってコロナ経済危機第2波のインパクトが決まる。ただ日本の1.5倍はGDPが落ち込んだ欧米では企業倒産の増加やインバウンド減少が不可避で、世界的不況が訪れる可能性が高い。今は無理せず耐え忍ぶ時期です」
飯田氏によると今回、打撃を受けたのは対個人サービス系の事業で財を成した新興リッチ層。また住宅ローンや養育費を抱えながらボーナスや給与がカットされた中流層。そして、飲食店などのアルバイト先も失った下流層という。
「まず飲食店経営者などの新興リッチ層は業態の再考が必要です。そのキーとなるのは資本性ローン。資本性ローンとは負債ではなく自己資本の一部とみなされ、返済順位が低いタイプの融資形態です。
持続化給付金はよほどの零細企業以外には焼け石に水。別途借金をして維持している。これだけ借金をすると経済が正常化したあとに運転資金を借り入れできなくなるが、資本性ローンなら可能になります。
資本性ローンの普及にどれだけ国が予算をつけるかが経営層の回復を左右するでしょう」
中流層に関しては、固定費の圧縮が喫緊の課題だ。
「賃貸であれば、あと2駅遠くに引っ越すなどの対策が必要です。住宅ローンがある人は失業しない限り売却は勧めません。現在は一番価格が安く、売れにくい」
そして飯田氏は、新型コロナに対するリスクを社会が正しく計量することを求める。
「感染拡大防止のためにここまで経済活動を犠牲にすべきだったのか、各国で検証が必要です。経済によっても人は死ぬ。政治にはコロナを恐れる大きな声だけを拾わず、必要以上に経済活動を止めない決定と大胆な財政出動を求めたいですね」

飯田泰之氏
【経済学者・飯田泰之氏】
明治大学政治経済学部准教授。専門はマクロ経済学・経済政策。著書に『
日本史に学ぶマネーの論理』(PHP研究所)など
<取材・文/週刊SPA!編集部>