思いやりが世の中を変える
――最初のお子さんを出産した頃と比べて、子育てや介護と両立しながら女性は働きやすくなったと感じますか?
片岡:「男女共同参画」という言葉も出てきて、自分が仕事を始めた当初よりはしやすくなったと思います。ただ、同世代の方でも、別の場所に生まれて違うお仕事をされている方は違うかもしれないので、一概には何とも言えません。いずれにせよ、まだまだ様々な問題があって、これからも男女の差をなくすということは言っていかなければならないと感じます。
私たちの世代でも、女性が働くことに対してどこか遠慮する空気があるのも事実です。女性に働かないで欲しい空気もあるし、逆に女性に働いて欲しい空気もある。女性の意思とは別に「こうして欲しい」という空気があるという話は聞きますね。
それも、全ての家庭、そして全ての世代において違うのではないのではないかと思います。例えば「働いて欲しくない」ということを「働かなくてもいい」と捉えれば、幸せな環境だし、それを逃げ出したいと思えば鎖が付いているようなものです。生き方が多様化していると感じますが、それぞれの女性の意思が尊重される状態であって欲しいです。
――片岡さんご自身はどのようにして子育てとの両立をしたのでしょうか。
片岡:実家の愛媛にいる母親には頼れなかったので、ベビーシッターさんや保育園、託児所などに預ってもらって乗り切りました。長期の仕事になると自分の収入を超える費用が掛かることもありました。でも、その時に命を預かる保育士さんの費用は尊いと思ったんです。そういう意味での気付きがたくさんある時期でしたね。
デビューした頃は、普段は何をしているのかがわからない人物像を目指していましたし、家庭のことは「一生話さない」と思っていました。でも、女性が家庭を持ちながら働くのは当たり前の時代になり、そうやって意地を張っていても仕方がないと思うように変わってきて。次第に話すようになったんですね。
かつて「男性が仕事、女性が家庭」という厳格なロールモデルがあった戦前の頃から考えると、長い道のりではありましたが、みんなで助け合って考えた結果、良い方向にきているのではないでしょうか。仕事と子育て、介護のジレンマで苦しんでいる人だけではなく、道で歩いて困っている人がいたら「大丈夫?」いう気持ちを持つ。それだけで世の中や自分の人生は変わるのではないかと思いますね。
(c)DirectorsBox
――本作の見どころ、伝えたいメッセージについてお聞かせください。
片岡:シホもカノウも他の女性たちも「ここ」というところで、自分で全て判断をしています。「女として」という前に「人として」こうするということが、やはり気持ち良かったですね。登場人物たちには、失恋はもちろん、他の苦しいことも起こるのですが、もの哀しさよりもパワーが勝っているんです。映画の冒頭のカノウの独白、啖呵を切る、悔し涙を流す、全てのシーンが愛おしいです。自分でチョイスしたことを自分でやり抜く、自分の足で立つ。その逞しさを見て欲しいと思っています。
また、予告編で流れるカノウの独白は、自分で自分の人生を決められないかのようですが、最後には、彼女はきちんと自分の生き方を選んでいることがわかる。それはもちろん、カノウだけでなく、他の女性たちも少しづつ映画の中で成長して変わっていくんです。その過程もぜひ、見届けて欲しいですね。
<取材・文/熊野雅恵、撮影/萩原美寛>
ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。
タイトル:『タイトル、拒絶』
公開日:新宿シネマカリテほか全国順次公開中
監督・脚本:山田佳奈
キャスト:伊藤沙莉 恒松祐里 佐津川愛美 / 片岡礼子 / でんでん
森田想 円井わん 行平あい佳 野崎智子 大川原歩 モトーラ世理奈 池田大 田中俊介 般若
プロデューサー:内田英治 / 藤井宏二
キャスティングプロデューサー:伊藤尚哉
劇中歌:女王蜂「燃える海」(Sony Music Labels Inc.)
企画:DirectorsBox
制作:Libertas
製作:DirectorsBox / Libertas / move / ボダパカ
配給:アークエンタテインメント
2019 年 / 日本 / カラー / 98 分 / シネマスコープ / 5.1ch
レイティング:R15+
オフィシャルサイト:
http://lifeuntitled.info
オフィシャルツイッター:
@titlekyozetsu #タイトル拒絶