女優・片岡礼子が語る“仕事と子育て”の両立「男女関係なく言い分聞き合って」
女優・伊藤沙莉さんが“ポン引き・街娼”注意の看板横に下着姿で佇む。そんな圧倒的インパクトの場面写真が話題を呼んでいる映画『タイトル、拒絶』。それぞれ事情を抱えながらも力強く生きるセックスワーカーの女性たちを描いた山田佳奈監督の作品だ。
――本作ではルッキズムや男性からの扱われ方など「女性であるがゆえに悩むこと」がテーマになっています。山田監督は「性別関係なく対等に生活を守っていくために女性としての主義を掲げるべきであるが、無意識の(性差別的な)ものをいちいち批判するよりも大切なことは、相手の言いたいことによく耳を傾けること。相手を拒絶することではなくて、自分が今から何をしていくかが大切」とおっしゃっています。このことについてはどのように思いますか?
片岡礼子(以下、片岡):とてもデリケートなテーマの映画に、この言葉が出たのは素晴らしいし、監督の真摯な姿勢が現われていると思いました。相手の言い分に耳を傾けるということは当然のことなのですが、実はとても難しいですよね。
性差別ということよりも「男女の役割」ということに惹かれます。言葉一つとっても、男らしさ、女らしさとカテゴライズするために言葉が存在するわけではないと思います。歌舞伎の「いよっ、~屋!」というように掛け声をするような感じで「男らしいね」という分には素敵な言葉だと思います。また、女性に「気が利くね、女性らしいね」と言ったとして、それが直ちに性差別になるのかと言えば、そうではなくて。
今、向き合って話していれば、“差別的な意味で言っているのではない”ということは十分伝わっていますよね。ところが、SNSなどで「Web上にUPした一言が全世界に届く」という状況があると、言葉が独り歩きして、意図しない形で言葉が広がり問題が大きくなってしまうのかもしれません。そういう意味でも「言葉をどのように捉えるかというよりも、自分の行動をどうするかの方が大切」ということにも共感します。
――女性の悩みにはキャリアと子育て、介護をどのように両立するかもありますね。
片岡:かつてそのことは各家庭から外へ出てこない問題で、SNSがなかったら他人の家庭の事情について、ここまで知られることはなかったと思います。嫁姑問題もそうです。事情は各家庭はもちろん、地域によっても違いますよね。そういうプライベートな問題にどのように対処するかはもちろん、マニュアルはありません。そういう意味でも監督の言った「相手の言い分に耳を傾ける」ということが大切なんじゃないかと思いますね。
「何でだろう?」と思った時に自分一人で掘り下げるのではなく、「どうしてでしょうか?」と失礼のない言葉で聞けばいいですよね。そうすれば、上も下もなく自分の言い分を相手に届け合うことができると思います。
――片岡さんご自身は、20代後半で第一子を出産し、3人のお子さんを育てながら女優業をしてきましたね。
片岡:私も3人の子育てをして、親の介護を視野に入れなくてはならない年齢になりましたが、子育てや介護は抱えている「問題」というよりは「生活の一環」だと思います。なので、そういうことについて話す時は笑いが必要だと感じています。
例えば、介護のことを父親と話していると、「あんたに迷惑掛けたくないんよ」で話を切られてしまうんですね。思いは「お父さん、お母さん大丈夫?」なのに、つい深刻な話にして相手が言いたいことを言い辛い状況にしてしまうというか。
最初から深刻な話にしてしまうのではなく、相手のことを知ろうと面白いことを言うと、「わぁ!」と心が温まりますよね。コミュニケーションを取ろうと思ったら、語り掛けるだけではなく笑いがあった方がいいんだと気が付きました。
舞台は雑居ビルにあるデリバリーヘルス「クレイジーバニー」の控室――。就職活動が上手くいかず、デリヘル嬢になるつもりで体験入店に来たカノウ(伊藤沙莉)は、いざという場面で客から逃げ出してしまったことからデリヘル嬢たちの世話係となる。そして、彼女たちの突き付けてくる様々な注文に右往左往の日々。
そんな癖のあるデリヘル嬢たちの中にひとり、カノウが本音を話せる女性がいました。それが、片岡礼子さん演じる“ベテラン”デリヘル嬢のシホ。
周囲より一世代上であることから物事を一歩引いた目で見つめ、言うべき時に言うべきことをビシッと言う。そんな役どころを演じた片岡礼子さんに、今回は、本作のテーマとなっているルッキズムや女性の生き方などについて、ご自身の経験を振り返りながらお話してもらいました。
言葉よりも行動が大切
キャリアと子育てや介護との両立
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ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。
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タイトル:『タイトル、拒絶』
公開日:新宿シネマカリテほか全国順次公開中
監督・脚本:山田佳奈
キャスト:伊藤沙莉 恒松祐里 佐津川愛美 / 片岡礼子 / でんでん
森田想 円井わん 行平あい佳 野崎智子 大川原歩 モトーラ世理奈 池田大 田中俊介 般若
プロデューサー:内田英治 / 藤井宏二 キャスティングプロデューサー:伊藤尚哉
劇中歌:女王蜂「燃える海」(Sony Music Labels Inc.)
企画:DirectorsBox 制作:Libertas 製作:DirectorsBox / Libertas / move / ボダパカ
配給:アークエンタテインメント
2019 年 / 日本 / カラー / 98 分 / シネマスコープ / 5.1ch レイティング:R15+
オフィシャルサイト:http://lifeuntitled.info
オフィシャルツイッター:@titlekyozetsu #タイトル拒絶
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