仕事

宅配便の翌日配達はなぜ可能か? 配達員が現場で見た景色

理不尽なクレームに耐える宅配便ドライバー

「なんで今持ってくるの!? 今、手が離せないから後でもう一度来て」 「ちゃんと消毒した手だろうな。でなきゃそんな荷物受け取れないぞ」 「ちょっと遅いんじゃないの! これ午前指定の荷物よ! 今何時だと思っているの、11時よ!」 宅配便 11時は午前中ではないのか……という議論はさておき、謂れのないクレームを日々言われる宅配便ドライバー。世の中便利になればなるほど、理不尽なクレームが増えてくるのも事実。コロナ禍の昨今、巣ごもり需要により宅配便が伸び続けている。家にいながら買い物ができ、それも直接家にまで届けてくれる。蛇口を捻れば水が出たり、スイッチを押せば電気が点くのと同じように、クリックすれば荷物が届く。もはや宅配便はインフラの地位を確立した。今の時代に無くてはならないものとなった。

当たり前のように受け取っている荷物

 ある時、小学生の甥っ子に聞かれた。 「この荷物って、どういう風に届くの?」  この問いに正解に答えることができる人はどのくらいいるだろうか? それに「なんで昨日出した荷物が今日届くの?」の問いにはほとんど答えられないであろう。  筆者が宅配便ドライバー時代、一人暮らしの老女の家に集荷に行った時のこと。 「これからこの荷物を運ぶの? 帰りは明日になっちゃうね。気をつけてね」  と言われたのを思い出す。その老女は、集荷した私がそのまま送り先に配達すると思っていた。稀なケースだが、だいたいは似たようなことを思っている人もいるくらい、宅配便が届く過程までには興味をもたない人が多い。
次のページ
翌日配達を可能にしているのは?
1
2
物流ライター。ライター業の傍らタクシードライバーとして東京23区内を走り回り、さまざまな人との出会いの中から、世の中の動向や世間のつぶやきなど情報収集し発信する。また、最大手宅配会社に長年宅配ドライバーとして勤務した経験とネットワークを活かし、大手経済誌のWEB版などで宅配関連の記事も執筆する。タクシー・宅配業界の現場視点から、「物」・「人」・「運ぶ」・「届ける」をそれぞれハード(荷物・人)だけではなく、ソフト(心と気持ち)の面を中心に記事を執筆中。ブログ「吾は巷のインタビュアー!」

記事一覧へ
おすすめ記事