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宅配便の翌日配達はなぜ可能か? 配達員が現場で見た景色

翌日配達を可能にしているのは現場のドライバー

 宅配便の歴史を紐解くと江戸時代の飛脚まで遡る。現在は翌日に届く東京大阪間は、歩くと2週間くらいの距離を走り3~4日をかけて届けていた。もちろん1人でぶっ通し走るのではなく、各宿場に飛脚を置き、リレー方式で届けていた。ご存知の人も多いと思うが、これが正月の日本の風物詩である駅伝のルーツといわれている。  今や荷物はトラックで荷物を運びベースという宿場で違うトラックに渡される。それを遠方ならば何度か繰り返し自宅へ翌日に届くのだ。  翌日配達を可能にしているのが、オートメーション化による仕分けのスピード化などの技術革新やベースなどの配送中継拠点のネットワーク網の充実などがあげられている。この点に強調しテクノロジーを全面に出している記事は多数存在するが、実は人為的な作業が翌日配達を可能にしているのはあまり知られていない。

<宅配便即日配達の1日の流れ>

自宅最寄りの宅配便営業所の朝は早い。 5:00 各地域の荷物を積んだ大型トラックが到着。 ここではベースなどの大型施設にあるような自動仕分け機などのオートメーション化されたシステムはない。完全に人による手作業で荷物は仕分けられる。細かく指定された配達に仕分けられ、ここでもたつくとドライバーの出庫の時間に影響が出てしまう。この時間が即日配達を可能にするかの鍵を握る。 8:00~13:00(1便) 営業所から各エリアにドライバーが出庫し、 配達をしながら集荷をするという時間との闘いが始まる。 14:00~19:00(2便) 遠方の荷物が営業所に到着。 同じように配達と集荷をするが、この時間に「今すぐ持って来い!」などの再配達などが入ると即日配達に陰りが見えてくる。そして、この時間から随時各方面に向けた発送作業が行われる。最終の集荷の時間がずれ込むと発送が間に合わず翌日配達は不可能となる。 19:00~ 夜間指定の配達と再配達。 ===  ドライバーが配達を当日に終わらせ、集荷も時間までに完了することで翌日到着を可能し、即日配達を可能にしているのだ。このどれか1つでも欠けるとすべてが終わる。今や年末の繁忙期シーズン。平月とは比べものにならない量の荷物を即日配達しなければならない。まさしく今が正念場だ。筆者もあまりにもの荷物の多さに配り切れずに日付を跨いで配達した経験もある。  また、不在や住所間違い、受取り辞退などのように物理的に荷物が届いても人為的に届けられないこともある。すべてが全て即日配達ではないが、過酷な環境で必死に耐え忍ぶ宅配便ドライバーたちがいるから翌日到着、即日配達を可能にしている。機械の力でもシステムの力でもない人の手によって。未だ宅配業界はアナログの世界なのだ。  かつては東京大阪間を朝に出荷して夕方に届けるという当日配達という案もあったが、働き方改革により、様々なサービスが廃止に追い込まれている。その上に人手不足ということもあり、翌日到着、即日配達もいつまで続くかわからない。  ヤマト運輸の経営理念の一節にも『インフラとしての宅急便ネットワークの高度化』とあるように益々の宅配便の進化を遂げようとしているが、もはや宅配便の進化とは速さを求める段階は過ぎたような気がする。
物流ライター。ライター業の傍らタクシードライバーとして東京23区内を走り回り、さまざまな人との出会いの中から、世の中の動向や世間のつぶやきなど情報収集し発信する。また、最大手宅配会社に長年宅配ドライバーとして勤務した経験とネットワークを活かし、大手経済誌のWEB版などで宅配関連の記事も執筆する。タクシー・宅配業界の現場視点から、「物」・「人」・「運ぶ」・「届ける」をそれぞれハード(荷物・人)だけではなく、ソフト(心と気持ち)の面を中心に記事を執筆中。ブログ「吾は巷のインタビュアー!」
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