メディア過渡期にモデル・アイドルたちが陥った「思わぬ落とし穴」
インターネットの台頭でメディアの形が変化を遂げると、そこで仕事をするモデルやアイドルたちの活動内容や意識もガラリと変わった。過渡期とも呼べるなかで、新たな境地が開けることもある。その一方、「思わぬ落とし穴」にハマッてしまった人たちもいる。
廃刊や休刊が相次ぎ、もはや数えるほどしか発行されていない女性向けファッション誌で、今も読者モデルとして活動する秋山聡子さん(仮名・30代)も、自身の古い考えを捨て、インスタグラムやツイッターに活動の場を移しかけた一人。
「雑誌では、基本的にスタイリストさんが選んだ洋服を着て、メイクさんにメイクしてもらって、スタジオやロケ場所で撮影をして……って、自分以外はほぼ人任せ。それが仕事でお金ももらえましたが、SNSではほぼ自分発の情報です。雑誌だとイマイチだな、という衣装も着なければなりませんが、自分が良いと思ったモノやコトだけをアップして、皆さんからの反応がダイレクトにもらえる。雑誌に出ていた時以上の快感があります」(秋山さん、以下同)
雑誌の仕事とはいえ「読者モデル」としての秋山さんの収入は、撮影毎にもらえる数万円のみ。撮影が多い月でも10万円ちょっとである。秋山さんは一般企業の事務作業員という本職も持っているが、SNSでは、雑誌以上の収入をもらえるようにもなった。
「思った以上に企業案件がもらえました。サプリとか化粧品の宣伝ですね。私は代理店を通じてくる案件しかやりませんが、それでも月に20万円を超えます。もっと稼ぎたい子は業者と直接やりとりして、月に100万円近い収入の子もいます」
秋山さんは企業案件の「旨味」を知ってからは、雑誌への出演機会は減り、即収入につながるSNSの活動に力を入れ始めた。すると……。
「代理店を通した案件は、チェックも入っていたんですけどね。もっとお金が欲しくなって、代理店を通さない案件も取り始めちゃって。宣伝投稿には必ず入れなければならない“PR”の表記を付けなかったり、怪しげなダイエット系の商品でも、謝礼がよければどんどん飛びつきました」
収入が月に50万円を超えると、本職の時間まで惜しくなり退社。とにかく企業案件が取れるよう、企業ウケが良い生活スタイル、見た目になれるよう努めた。
しかし、なぜかフォロワーやファンは頭打ち。それどころか、日に日に目に見えて減っていったのである。
「その頃からコメントが荒れ始めて。“ステマ女”とか“人間広告”みたいな誹謗・中傷を受けるようになりました。本当に傷つきましたが、確かにお金になることばかり優先していたし、“雑誌に出ている人”という価値も無くなってしまっていました。
雑誌に出られるって、それこそが他者からの評価じゃないですか? SNSは誰でも出られますが、評価は後から。雑誌に出ていたのだから評価がもらえて当然、何をしても人がついてくる、と思い上がっていたのかもしれません」
雑誌の読者モデルからSNSの世界に
フォロワーやファンが減っていく
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