スポーツ

大井競馬場伝説の予想屋が語るコロナと予想屋の未来

手形を買い戻したいという客も……

――吉冨さんは、NHKのドキュメント番組で紹介されたように、独特の語り口が話題になっています。 吉冨 私が声を張り上げているのはお客さんに気づいてもらうためで、予想が当たらないとプロは名乗れないと思います。今は平和になりましたが、明日手形を買い戻さないと人生終わりという人間が、足元に絡みついてくることが幾度となくありました。逆に、馬券が当たればご祝儀で万札が飛びかっていた。最高だと1レースのご祝儀で167万円もらったと聞いたことがあります。 ――それがバブルなんですね。 吉冨 そうなんです。だから去年の売り上げがバブル期と同じになったと聞いても、私たちはまったく実感できないんですよ。何せ立つことすら許されないわけですから。

ネットで予想販売も……。変わりゆく場立ち予想の在り方

――そこが今回の取材の核心になるんですが、今後場立ち予想はどうなっていくのでしょうか?
吉冨隆安

最近ではネットで予想販売も手がけている吉冨氏。昨年の回収率は103%とnetkeiba内でトップにもなった

吉冨 ハッキリ言ってしまうと、打開策はまったく見いだせない状態です。今年の1月に場立ち2人だけを立たせて、密を避けながら段々と戻して行こうという話になっていたのですが、緊急事態宣言の再発令によって無観客開催になり流れてしまいました。ただ、我々は競馬場の華だと自負していますので、あくまで人を呼び込んで盛り上げるもの。人を呼びたくない……というのに、真逆の商売なので、緊急事態宣言が出ていなくても、売り上げは立たないし、厳しかったと思います。 ――そんな皆様の収入の支えになっているのが、ネットでの予想販売だと聞きました。吉冨さんも早い時点からnetkeibaで予想を提供しています。 吉冨 当初は反対の意見も多かったです。ただ私の中で、プロと呼ばれる人には3つの条件があって、 1.卓越した技量があること 2.マーケットになっている 3.生活の保障がない 3に関してはネタにしている部分もあるんですが、我々はずっと1と2でメシを食べてきたんです。それが競馬場の中でもネットの中でも同じではないかと。先ほど、若い人はネット内で好きに予想すればいいと話しましたが、その後ろには「私が倒してあげるから」という言葉が隠れているし、その自信がなければ何十年とプロを続けてきていないと思うんです。そんななか、netkeibaさんに声をかけていただきました。的中率や回収率、そして売り上げがランキングで見れるのは面白いんじゃないか。予想士として勝負の世界に飛び込んだのなら、ホームもアウェイも関係ない。戦い続けようと思いました。 ――昨年は地方競馬において回収率103%で年間1位を吉冨さんは獲得しました。 吉冨 うれしかったですね。12月は何度もサイトを開いて抜かれていないか確認してました(笑)。 ――では最後にこれからの目標、夢などを聞かせていただけますか? 吉冨 夢を語る前に、もう一度以前のようにお客さんが入って、競馬場が盛り上がってくれることを祈るだけですね。それにはこの騒動が一刻も早く収束してるしかない。正直なところコロナがなくても我々の仕事は厳しかった。だけどコロナのおかげで真剣に「これからどうしようか?」という時間を与えてもらったと思っています。ファンの皆様にも、現場の高揚感を味わってもらえるように祈っていますし、そのときに我々はどんなお手伝いができるのか?それをもう一度、仲間たちと真剣に考えたいですね。 取材・文/中山靖大
1
2
勝SPA!
テキスト アフェリエイト
新Cxenseレコメンドウィジェット
おすすめ記事
おすすめ記事
Cxense媒体横断誘導枠
余白
Pianoアノニマスアンケート