仕事

月収12万円のフリーターがシェアハウス経営に挑戦「家賃を払ってもらえない」

住人がやってきた

ベッド

部屋のベッド。橋本さん(仮名)もこのシェアハウスに住んでいる

「最初にやってきたのが、お笑い養成所に入学したという20代の青年です。少し変わり者ですが、いい奴で気に入りました」  幸先の良いスタートだったのだが、それから2人目が決まらない。住人が1人のままでは赤字だ。  橋本さんは格安ネットカフェのナイトパックが始まる17時前に店前に立ち、店に入っていこうとする何人ものホームレス風の人にビラを配って説明したという。 「ナイトパックは1000円ですよね? 毎日使えば月3万円。狭い椅子で毎日寝ないといけないし、シャワーも付いてないですよね? うちにくれば2万5000円でベッドがあるし、シャワーも使い放題、自炊もできますよ? って声をかけました」  すると数日後、携帯に公衆電話から連絡があった。橋本さんから説明を受けた田中さん(70代・仮名)という男性からだった。彼は、ある理由からネットカフェ難民に転落。収入は年金頼みだったが、電話があったその日から入居することになった。  3人目は20代の家出青年。両親が異常で「家族とは縁を切りたい」と家を飛び出したという。母親が多額の借金を抱えており、なんと、息子の彼にまで融資を受けさせていた。そのため、携帯電話を契約できないほどに信用を落としていたのだ。彼はまじめで好青年なのだが、携帯さえも契約できない状態。住民票の問題もある。  橋本さんとその仲間たちは、実家の所在地の役所まで車で連れていき、いろいろな手続きを手伝ってあげたという。これ以上の詳細は不都合が生じるので書けないのだが、現在は携帯電話も契約できたようで、アルバイトも始めたようだ。  

家賃を払ってもらえない

  「地方から出てきた北(仮名・30代)という男性には少し困っていて……。もともと向こうで働いていたようですが、コロナで仕事がなくなりリストラされたみたいで。東京までのバス賃もなかったみたいで貸してあげて、新宿のバスターミナルまで迎えにいきました。当然、食費も持っていないので、お米を支給してあげたんですよ。ただ、家賃を全然払ってくれなくて……」  普通はこのような状況になれば、働こうとするはずだが……。 「それが、働く意欲がまったくないんですよ。仕事を探している様子もない。自分の服をどこかで売って、タバコを買ってきているんです。ワケわからないし、いくら催促しても反応が薄くて」  橋本さんはUber Eats配達員の仕事を紹介し、自転車も貸してあげた。そして、「とにかく働いて家賃と貸している分を返してくれ。そうしないと〇〇日までに出て行ってもらいます」と強く警告したが、朝はダラダラと過ごす。まわりから促され、ようやく重い腰を上げて出かける。  帰宅は21時。10時間ぐらい働いているはずなのだが、5000円も稼げていない。  彼の行動を探ってみると、途中4時間ぐらいは仕事をしないでどこかに行っているようだった。  配達員としての報酬が振り込まれてすぐに少しでも返金してくれればいいものを、なぜか、そうせずに寿司を買って帰ってきて呑気に食べているのだとか。  客観的に見れば、手間がかかる問題児ばかりだが、橋本さんの表情は比較的明るい。 「最近、連絡してくる人が急に増えたんですよ。数人の若い女性からもあって、入居してくれそうです。いろいろ大変ですが、これからいい流れになりそうです」 <取材・文・撮影/今永ショウ>
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