仕事

これが電子書籍? 挑戦を続ける製本会社の“アイデアが生まれる現場”に密着

モノを作って売るまでに関わる人たちは、みな「チームメイト」

篠原紙工の仕事2 技術力の高さだけでなく、他の製本会社にはない豊富なアイデアで注目を浴びる篠原紙工が、現在のようなスタイルになったのは10年ほど前のこと。篠原さんが父の跡を継いで社長になってからだという。そのアイデアの源泉はどこにあるのだろうか。 「われわれが特別にアイデア豊富だとは思っていません。でも、作るモノの背景にまで踏み込むということを心がけています。つい『何を作るか』だけに目がいきがちですが、ウチは『そもそも、なぜこの形でないとならないのか。なぜこの色で、なぜこの紙を使うのか』というところまで深く踏み込みます。『その製品を手に取るお客さんにとって、何が最適なものなのか?』と考えて、アイデアを出していくんです」  さらに篠原紙工の場合は、印刷会社や出版社から依頼された製本に関するアイデアを出すだけではない。他社を巻き込みながら、その製品全体についてのアイデアを練り上げていくこともある。 「買ってくれるお客さんも、プロジェクトにかかわった協力会社も、社内の人たちも、一つのモノを作って売るまでのミッションにかかわる人たちは、みな同じチームメイトだと考えています。単にお金が上から下に流れるだけじゃ、仕事をしていてもつまらないですし、いいモノもできませんから。技術力や品質が高いというのは、モノを作るうえでは当たり前のこと。われわれは、その先を行きたいと思っています」  

できないかどうかは、やってみなきゃわからない

篠原紙工の仕事3 篠原さんは、今まで受けたことのない仕事、実現できるかわからないような依頼を受けても、最初から「できません」とは言わなかったのだという。 「『やったことがない』というだけで、『できないかどうかは、やってみなきゃわからない』ですから。でも、チャレンジするということは失敗もあります。正直言って、ウチはたくさんの失敗をしています。  その時にクライアントとチームメイトになっていないと、切り捨てられてしまいます。チームメイトであれば、失敗したら一緒になってそれを乗り越えようとしてくれる。だから挑戦し続けられるんです。  僕は『これはできますか?』と聞かれた時、『技術的にできるかできないか』『コスト的にできるかできないか』『納期的にできるかできないか』の三つに分けて考えます。これらをクライアントも含めたチームで話し合い、どういう条件ならできるのかを一緒に考えていきます。すぐに『できません』と言わないのは、そういうことです」
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「何とか製本業に陽の目を浴びさせたい」との思い
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