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自衛隊員へのワクチン接種は進んでいるのか?/自衛隊の“敵” 第6回 小笠原理恵

日本以外では軍人のワクチン接種はどうなっている?

 米国の政府関係者には優先接種枠があり、軍人だけでなく核兵器関連や作戦遂行に重要な役割を担う文官にも優先権が付与される場合もあります。  米国軍人のワクチン接種は個人の判断に拠るため接種拒否も可能でしたが、ワクチンを打たない者がいれば集団感染を防ぎ切れず抑止力に支障が出ると考えられていました。米軍では8月初旬で73%の軍人が1回目の接種を終えています。さらにワクチン接種を推し進めるべく、8月10日にはバイデン大統領がワクチン接種を義務化する方針を打ち出しました。これにより、米軍所属の隊員については9月中旬までにワクチン接種を完了する方針です。  ロシアでもワクチン接種は軍人優先でした。加えて、ロシアは軍人だけでなく、その家族も含めて9割が接種を完了したとされています。軍人の家族もワクチンを接種していれば、軍のなかで集団免疫を獲得できたに等しく、クラスター感染の心配もありません。軍事行動に出るような非常時に、新型コロナについて頭を悩ませるリスクは激減すると言っていいでしょう。  医療関係者だけでなく政府関係者や軍人、消防、警察、教師といった優先枠を設けて、国の重要な機能維持のために、諸外国はワクチン接種計画を綿密に組み立てています。

自衛隊のワクチン接種状況 現在の戦略は?

 一方、我が国の自衛隊はどうでしょうか? 「隊員は自治体の接種券を待て。でも罹患はするな」  こんな無理難題なスタンスが、自衛隊の新型コロナ感染症に対する大方針となっています。防衛省も政府も自衛隊員に対して、無責任に「最速の手段で」接種を完了しなさいと言いますが、「口先だけ」の指示でしかありません。すべては各々の隊員の行動に依存しています。国としての対策や戦略は、残念ながらどこにも見て取れません。  自衛隊も職域接種を希望していますが、接種担当にお願いをしても聞き入れてもらえない場合が多々あります。自衛隊病院などの限られた接種では8月半ばで医療スタッフを除く自衛隊の接種完了者は1~2割くらいに留まります。統一したワクチン接種の戦略がないため、地域差がかなりあります。まさか、自衛隊が自治体接種に割り込みするなんてことはできませんから、「最速の手段で」と言われても何もできません。  自衛隊員は派遣地では集団活動となります。心配していましたが、やはりオリンピック支援派遣で感染者は発生しました。
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ワクチン未接種の自衛隊員は「不安材料」になる
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