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自民党の派閥はなぜまったく機能しなくなったのか/倉山満の政局速報

今の派閥は例外だらけ

 自民党の派閥は、「親分を総理大臣にするために集まった国会議員の集団」です。だから、昔は総裁候補を持たない派閥を「中間派」と呼び区別しました。「派閥っぽいけど派閥じゃない」の意味です。 自由民主党 そんな派閥は例外だし、ほどなくして消えていった。なぜなら、派閥の領袖に金を出す人は「この人を総理大臣にしたい」と思っているから金を出すのであり、子分たちも「総裁派閥になって権力の中枢にいたい」と思うからついていく。ところが、今は例外だらけです。

従来の意味での派閥は岸田派と石破派のみ

 今の派閥を見てみましょう。 細田派=形式的な会長は細田博之。実質的な領袖は安倍晋三元首相。 麻生派=麻生太郎副総理財務大臣が領袖。 竹下派=竹下亘会長が引退声明。 二階派=二階俊博幹事長が領袖。 岸田派=岸田文雄元外相が領袖。 石破派=石破茂幹事長が領袖の座を放り投げた。 石原派=石原伸晃元幹事長が会長。でも実際に仕切っているのは森山裕国会対策委員長。  これに加え、菅派(菅元首相の下の集まり)。  ついに派閥を名乗ることがなかった菅派の他、従来の意味での派閥は岸田派と石破派のみ。だから、この二人が常に総裁選で候補者に名前が上がるけど、他の人は「まず派閥の中で総裁候補として承認を得てください」というところから始まります。現在、河野太郎さんは麻生派の中の根回しに追われているとか。  ではさらに実態を見ていく。

まとまりはまったくないけど、数は多い「細田派」

細田派97人
細田博之

画像:細田博之氏オフィシャルウェブサイト

 下村博文政調会長が「僕も総裁選に出たい」と言い出し、菅首相に「出るんなら役職やめてね」と当然のことを言われて出馬断念。総裁選に出ると言うことは、今の総裁を引きずりおろすということだから、菅さんが「私を引きずりおろしたい人に大事な役職(政調会長)は任せられない」とするのは当然。  他に萩生田光一文科大臣や西村康稔コロナ大臣とか、中堅どころ(将来の総裁候補)は揃っている。まとまりはまったくないけど、数は多い。そんなところへ、安倍さんが突然、「高市早苗を応援しろ!」とか言ってきた。  まとまるのか?  ちなみに高市さんは、その昔、細田派を出ていった人。いわば「後ろ足で砂をかけた人」なので、ますます釈然としない。安倍さん、岸田さんと仲が良いけど、岸田さんが「モリカケ!」とか言い出したんで、あわてたんでしょう。河野さんも安倍内閣で出世させた人なので、勝ち馬に乗ろうとしたら当てが外れた?  普通、キングメーカーって、積極的に「コイツを次の総理にする!」だけど、安倍さんの場合はキングメーカーになっていない。
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「麻生派」「竹下派」「二階派」
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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