恋愛・結婚

「鏡越しに…」安ホテルに住む外国人女性の誘惑に葛藤した夜

 9月中旬、少し肌寒い日が増えるとともに、夏の終わりを実感する。もう秋は目の前である。この時季を迎えると、僕のことを「スウィーティー」と呼んだ、外国人の彼女との甘い夜(!?)の思い出がよみがえってくる。

突然、声をかけてきた女

タイムズスクエア

ニューヨークのタイムズスクエア

 あれは僕が21歳のときのことである。当時、僕は映画制作の仕事に就くことを夢見てニューヨークの映画専門学校に通っていた。脚本、撮影、編集などについての実践的な内容を8週間という短期間で教えてくれる学校である。  その授業の一環で撮影のワークショップを行っていた。クラスメイトと3人のチームを組んでマンハッタンの路地裏でカメラを回した。秋が深まってきており、冷たい風に吹かれた枯葉がカサカサと乾いた音を立てて石畳の上を滑っていた。  撮影を終えてカメラなどの機材を片付けていると、ひとりの若い女性が話しかけてきた。 「あなたたち、ここでなにしてるの?」 「映画学校のワークショップで撮影をしていたんだ」 「ふーん、そういうことなら私が出演してあげてもいいわよ」 「え?」 「私、女優を目指してるの。だから演技は得意よ」 「でも……」  僕は頭を抱えてしまった。彼女は濱田マリをカレーの中にぶち込んで三日三晩コトコト煮込んだような顔をしていた。その顔は僕のタイプではなく、僕の作品に出演してもらいたいという気にはあまりなれなかったのである。 「もう撮影終わってるから」 「でも、またなにか撮影するでしょ?」 「するけど、次の内容はまだまったく決まってないんだ」 「じゃあ、内容が決まったら教えてよ」  どうして彼女がこんなにしつこく食い下がってくるのか不思議だった。女優を目指しているというが、たかが映画学校の生徒の作品に出演したところで女優としてのステップアップに繋がるとはとても思えないのだが……。 「どんな内容にするにしてももうキャストは決まってるんだ。だから、ごめんなさい」  僕がそうはっきりと断ると、彼女はようやく諦め、しょぼんと肩を落として立ち去っていった。もうキャストが決まっているというのは嘘だった。

安ホテルで奇跡の再会

 その数日後のことである。僕はタイムズスクエア近くの安ホテルをアパート代わりにして住んでいた。その日の授業を終えてそこに帰ると、ミニスカートを履いた女性が尻を振りながら階段を上がっていた。  いったいどんな顔をしているのだろうかと気になってしまった。二段飛ばしで階段を上がって彼女を追い抜き、さりげなく振り向いた。 「あ!」  そして二人同時に声をあげてしまった。数日前に僕に声をかけてきた彼女だったのである。 「どうしてここに……」 「あなたこそどうしてここに?」 「僕はここに住んでるんだよ」 「本当に? 私もここに住んでるのよ」 「え、そうなの?」 「よかったわ。あなたにはもう一度会って話したいと思ってたところなの。私の部屋に来なさいよ」  彼女はそう言うと、有無を言わせずに僕を自分の部屋に連れていった
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