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『ポケモンGO』はeスポーツになれるのか? 対人戦バトルが今ひとつ盛り上がらない理由

対人戦が今ひとつ盛り上がらない理由

 まずはチート(不正行為・不正プログラム)の問題。2020年6月に、ゲーム内のランキング1位のプレイヤーがチート(大技のゲージが速くたまる)を使用していたことが発覚し、10日間ほどリーグ戦が停止した大きな事件がありました。ひとまず当該チートへの対応はなされたものの、その後も不審な挙動がしばしば報告されています。どの対戦ゲームも不正行為とのいたちごっこになるとはいえ、運営のナイアンティックの対応の曖昧さや遅さには不満が出ています。  もうひとつ、バグと見られる遅延・フリーズの多発もプレイヤーがストレスを抱える要因。技を撃つタイミングが重要なバトルだけに、入力のタイムラグは命取りとなります。こうしたバグがなかなか改善されず、チートなのかバグなのか、判別できない状況となっています。このままでは世界大会がフェアに行われるかは疑問です。  また、そもそもポケモンを集めるコレクションゲームとしてスタートした『ポケモンGO』に、シビアな対人戦は馴染まないという指摘もあります。自分のペースでコツコツとポケモンを集めたいユーザーにとっては、オンラインで誰かと戦うことに抵抗があるでしょう。レアなポケモンの報酬で釣って、強引にGOバトルリーグに誘導する運営のやり方に不満を抱いているユーザーも多いようです。
ポケモンGO

低い確率で出現する色違いポケモンを集めるコレクション要素が『ポケモンGO』の柱

『ポケモンGO』のユーザー規模の大きさに比して、対人戦の「GOバトルリーグ」が今ひとつ盛り上がっていないのは、バトル自体の面白さを損なうバグやチートといったゲーム内の問題と、対人戦がゲームコンセプトと合わないという根本的なズレがあるからではないでしょうか。

スポンサー離れと既存ユーザーへの“課金圧”

 2016年の配信開始から5年が経過した『ポケモンGO』ですが、課金の売上は右肩上がり。米調査会社によると、1年前の2020年上半期の全世界売上が4億7900万ドルだったのに対し、今年上半期は6億4160万ドルと34%も増加しています。  ただこれは、コロナ禍において投入された、その場に行かなくてもポケモンが取れる「リモートレイドパス」の施策が当たって1人当たりの課金額が増えているのが理由と考えられます。一般的にスマホゲームは新規ユーザーの流入が鈍化すると、既存ユーザーに対してのいわゆる“課金圧”を強める傾向にありますが、『ポケモンGO』もその段階に入ってきたと言えるかもしれません。  日本では収益の柱のひとつだったスポンサーの撤退も目立っています。スシローや住友生命など新規参入はあるものの、昨年10月にはマクドナルド、今年の2月末にはイオン、この10月31日にはセブンイレブンが『ポケモンGO』とのオフィシャルパートナーを解消しています。アイテムがもらえるポケストップが少ない地域のユーザーにとっては大きなマイナスです。 『ポケモンGO』の対人戦がeスポーツ化し、日本を含めて世界で浸透するには超えなければならない課題が多そうです。今年夏に配信が始まった中国テンセントゲームズが手がける『ポケモンユナイト』も、『ポケモン』関連の対人戦ゲームとしてはライバルにあたります。ユーザーに対人戦バトルへの移行を促すあまり、『ポケモンGO』そのものの人気が失速しないといいのですが……。
ポケモンユナイト

Nintendo Switch版とスマホ版の合計DL数が2500万DLを突破した『ポケモンユナイト』公式サイト

<文/卯月 鮎>
ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も
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