仕事

開業資金は約35万円、「清掃業」に挑戦するタクシー運転手が増加

清掃業の仕事は「掃除をするだけ」ではない

 では、実際に個人の清掃業者が大手に対抗し、“お客様から信頼を得る”ためにはどうしたらいいのか。鶴原氏の創業時のエピソードから紐解いていきたい。 「起業する以前の大学生時代に人生のどん底で塞ぎこみ、引きこもっていたことがありました。部屋は荒れ、水回りもカビだらけだったのですが、ある日テレビで近藤麻理恵さんを見て、大きな衝撃を受けたのです。人間は部屋の状況と自分の心の状況がリンクしていて、なんだかモヤモヤするときは部屋が汚かったりする。掃除って面白いのではないか、と気づきました」  引きこもり生活から脱却することができた鶴原氏は、清掃業のアルバイトを始める。 「依頼を受け訪問したお客さんとの間に最初は壁があるのですが、清掃を終えた頃には心を開いてくれているんです。 育児や家事で大変な日々を過ごされている主婦の方に寄り添った言葉がけをし、『日々の頑張りを認めてくれて本当に嬉しいです』と涙ながらにおっしゃっていただきました。  そんな経験をするうちに、清掃業はただ掃除をするだけでなく、“コミュニケーションもとても大切である”ことに気づきました

“サービス業”であることを意識した

研修の様子

研修の様子

 そんな信念に基づき、2016年に鶴原氏はいきなり清掃業の会社を起業。登記をする際にはすでに4人のスタッフが入社することが決まっていたという。 「新卒で清掃業の会社に入社してノウハウを学ぶという方法もあったと思うのですが、自分は最初から起業して理想の経営者像と現実の自分とのギャップをどんどん埋めていくほうがいいと考えました。初期の頃は法人案件の場合支払いサイトが長いため資金繰りで苦労し、自分の給与は10万円も確保できないことが続きましたが、とにかく必死に営業をすることで少しずつ仕事が増え、経営も安定していきましたね」  まだプラットフォームがなかった時代から多くの顧客に評価をされた理由を、清掃業を“サービス業”として捉えたからと振り返る。
スーツ型の作業着

清掃前にヒアリングを行うスタッフ(写真右)。スーツ型の作業着を着用している

 たとえば、訪問時には作業着ではなく「スーツ型作業着」を着ていった。「お客様は何を望んでいて、自分たちはどのように提供できるか」を徹底的に考え抜いたという。
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コロナ禍で需要は増加傾向
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インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。X(旧Twitter):@KA_HO_MA

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