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石田ゆり子が日本一売れているアラフィフ女優である理由。出演作から読み解く

「美容と健康は切り離せません」

 自分にしか出来ない役柄のある役者は強い。黙っていても仕事の依頼が来る。ただし、その分、努力が求められる。素質と才能だけで50歳過ぎまで活躍している人は聞いた試しがない。石田の場合、筋トレを欠かさず、食事には納豆、ヨーグルト、キムチ、味噌などの発酵食品を欠かさないという。 「美容と健康は切り離せません」(※『LEE』2021年1月号でのコメント)  不健康では美が損なわれる、と考えているわけだ。初々しさや清潔感などが損なわれないのも健康に留意していることが大きいだろう。  そもそも石田は9歳から17歳まで日本代表クラスの競泳(平泳ぎ)選手だったため、幼いころから摂生を重ねてきた。芸能界入りした後も夜遊びやご乱行などが報じられたことは一度もないのはご存じの通り。初々しさや清潔感は片時で身に付いたものではない。 性格は真面目。「ウソは嫌いです」と、インタビューで何度か口にしている。1994年に周囲が結婚目前と見ていた同世代の俳優と別離を遂げたが、これも俳優側の不実が原因だった。自分もウソをつかないように心掛けているという。

33年前と変わらない清潔感

 デビュー作は1988年に放送されたNHKの単発ドラマ『海の群星』。沖縄の石垣島が舞台で、厳しい漁師の親方(故・緒形拳さん)の下で働く健気な少女に扮した。家が貧しかったため、親方に売られたという筋書きだった。  石垣島での物語なので肌は日に焼けて真っ黒だったが、清潔感と初々しさは現在と一緒。このドラマから33年も過ぎているのに、ここまで持ち味が変わらない人も珍しい。  これまでのキャリアで汚れ役の経験はほとんどない。TBSで主演した連ドラ『不機嫌な果実』(1997年)の水越麻也子役は不倫に走る人妻だったが、これは麻也子の相手をろくにしない夫(渡辺いっけい)に非があるように映った。なにより、いつも「私だけが、損をしている」と、ふくれている麻也子はかわいらしかった。  石田ゆり子はどんな役を演じても石田ゆり子なのである。貶しているわけでは決してない。故・高倉健さんや故・森光子さんらと一緒のタイプ。決まった形の演技が1つのブランドとして確立されており、観る側も変わらないことを求めている。例えば石田のサイコパス役など誰も見たくないはずだ。

妹と比較された過去も

 妹の石田ひかり(49)と比較されることもなくなった。これもブランドが完全に確立された表れと見ていいだろう。2000年代前半までは何かにつけ比較された。仕事も私生活も。ひかりはどんな役柄でもこなすタイプの女優で、2人の個性は全くと言っていいほど違うが、その認識が浸透していなかったせいでもあるだろう。  ひかりがNHKの敏腕ドラマディレクター・訓覇圭氏(54)と結婚した2001年には一部週刊誌に「『妹の結婚』、素直に喜べない? 先を越された姉の〝乙女心〟」と題した記事まで載った。実際にはどうだったかというと、もちろん妹の結婚を喜んでいたことを当時の取材者なら誰もが知っている。  石田の立場は当分、揺らぎそうにない。新作連ドラ『妻、小学生になる。』で演じる、夫と娘に10年も思われ続け、天国から戻って来る女性役の適任者もそういないからだ。  ちなみに天海祐希(54)と仲が良く、年下の石田は天海を「アニキ」と呼んでいるそうだ。なんか納得である。 <文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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