ライフ

「誰とも話せず言葉が出てこなく…」コロナ禍で孤立する困窮者には“居場所”が必要だ

クラウドファンディングにした狙い

日常生活支援いこいの会

世間がコロナ禍となる以前は、支援に携わった生活困窮者を無料で招待して一緒に食事や会話をする「いこいの会」を開催していた

 2人の話を聞くと改めて居場所・相談者の必要性が伺えた。次に『コロナ禍で孤立状態にある生活困窮者の居場所をつくりたい』を開始した背景を聞くと、平田氏は「ほっとプラスでは、“いこいの会”という交流会を開催し、今まで支援に携わった生活困窮者を無料で招待して、一緒に食事やお話しをする活動を行っていました。ただ、コロナ禍以降は、中止にせざるを得ませんでした」と説明。 「いこいの会の参加者のみなさんにはハガキや電話を利用して近況を聞いていたのですが、『この間体調を崩して入院をしていた』『誰とも話さなくなって、言葉が出てこなくなった』『また以前みたいに集まりたい』という声が多く寄せられ、居場所の重要性や必要性を改めて感じ、『居場所づくりの活動を再開したい』と考えてスタートしました」  今回、クラウドファンディングという形式をとった理由として、「以前からこの居場所づくり活動は参加費を取らずに行っており、コロナ禍以前も助成金や寄付金の中で運営をしていました。ただ、資金集めの側面もありますが、より多くの人にこの活動を知ってほしいという思いから、今回のクラウドファンディングを採用しました」と話した。

誰でも生活困窮者になり得る

相談写真

ほっとプラスでは、生活に不安がある人がソーシャルワーカーと相談できる窓口を設けている

 ここまで話を聞いて「そもそも国がやるべき活動では?」という疑問が浮かぶが、藤田氏も「まさにその通りです」と語気を強める。 「本来、福祉行政が機能していれば必要がない活動です。政府も生活困窮者支援への取り組みを進めていますが、予算規模が小さく、対応が不足しています。今後も現場から政策提言も続けながら、生活困窮者を生み出さない福祉社会を築けるように尽力していきます」  声を上げることは生活困窮者を出さないために必要不可欠である。しかし、どれだけ政府が充実した支援制度を設けたとしても、“自己責任論”の空気感が強ければ、利用することは難しい。藤田氏も「貧困は長らく『本人の努力不足』と思われてきました」と蔓延する自己責任論について言及する。 「誰もが生活困窮者になるリスクと隣り合わせであることは、コロナ禍が証明しました。自分自身だけでなく、自分の両親や友達も貧困リスクを抱えているのですから、『生活保護は甘えだ!』と切り捨てるのではなく、支援制度が充実したほうが良くないですか? そもそも、本人の問題ではなく社会構造により、貧困に陥るケースは圧倒的に多い。当事者の声、制度利用者の声、支援活動状況などを情報発信を続け、支援制度の充実化だけではなく、助けを求めやすい雰囲気を醸成していきたいです」 『コロナ禍で孤立状態にある生活困窮者の居場所をつくりたい』への寄付は2022年4月28日(木)23時までではあるが、平田氏は「今後も生活困窮者の支援は続けていきます」と話す。今回に留まらず、これからもほっとプラスの活動に注目したい。 取材・文/望月悠木
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki
1
2
おすすめ記事