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“完璧”な上白石萌音の音楽に対し、森七菜は“抜けだらけ”?それでも溢れ出る魅力

 いま人気の若手女優2人が新譜を発表しました。7月13日に上白石萌音がニューアルバム『name』を、そして森七菜が8月31日に初のフルアルバム『アルバム』をリリース。  歌への向き合い方からそれぞれのキャラクターが浮かび上がってきます。

手堅い上白石萌音の音楽

上白石萌音

上白石萌音『name』Universal Music

 まず上白石萌音。こちらは実に手堅い仕上がりです。彼女の清潔感や聡明さをそのまま音に託したような作りで、安心して聞ける作品になっています。 「懐かしい未来」(作詞・作曲 森山直太朗)は“超”王道Jポップのバラード。静かなピアノの伴奏で語りかけるように歌ったあと、サビではストリングスとともに壮大に歌い上げる。とはいえ、押す一方ではなく呼吸のメリハリで歌詞に深みを与えるあたりが心憎い。<悠遠の風のように走れ 懐かしい未来へ>なんていうちょっとカッコ良すぎるフレーズも、おおげさになりすぎずいい塩梅です。  また今作ではジャズっぽいフィーリングにも挑戦しています。「ジェリーフィッシュ」は素早い転調と込み入ったメロディの難曲。それでも彼女は軽やかに乗りこなしている。バンドのリズムを引き立てるべく、歌のボリュームを抑えめにしているのですね。音楽IQの高さがうかがえます。  そしてスタンダードナンバーの「Tea for Two」では美しい英語も披露。発音が安定しているので音程がフラフラしない。個人的には歌いだしのアレンジがちょっとせわしなく感じるのですが、それでも堂々と大名曲と向き合っています。

「完璧な仕上がり」だけど…

   アルバム『name』は“正しい”作品です。美しい発声、丁寧な言葉づかい、折り目正しい音楽。道徳の教科書の付録にしたいぐらい完璧に仕上がっています。“役者・上白石萌音”に世間が抱くイメージを補強する音楽活動だと言えるでしょう。  ただし気になる点も。全ての要素が同じ方向を向きすぎていて、意外性や抜け感に乏しい。穴のなさに距離を感じてしまうのですね。
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上白石萌音とは対象的な森七菜の音楽
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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