仕事

ラブレター1通1万円。IT企業の部長が「ラブレター代筆屋」の副業を続けるワケ

会社員では得られない感情を求めて代筆屋に

チラシの一部分

活動初期に配布したチラシの一部分

「就職相談などのサービスは、人事で働いた経験を活かしたものです。代筆屋のみになったのは4年ほど前から。結局、代筆の依頼がいちばん多かったので、他を掲げている理由が無いなと。それに、プレゼンや面接指導で得られる感情って、会社員をやっている時に得られるものと同じだったんですよね。本業の延長線上みたいで。それならやる必要無いなって思ったんです」  副業を始めたばかりの頃は、ほとんど依頼が来なかった。宣伝のため、自らビラ配りをしていたそうだ。  「当時はこの活動に費やすお金も無かったので……。どうしようかなと思った時に、ビラ配りしか浮かばなかったんですよね。エクセルを使って自分でビラを作って、新宿や水道橋で配っていました。10人に1人くらいは受け取ってくれたかな。でも集客はゼロでした(笑)」  活動を始めて少し経った頃、ようやく最初の依頼が舞い込んでくる。しかしそれは、予想もしていなかった内容だった。

予想外の依頼に責任を感じ始める

小林慎太郎「病気の影響で上手に字を書けないため、代わりに字を書いてほしい。そういった依頼でした。僕が考えていたのは、ラブレターの内容を考えるという意味での代筆。だから予想外でしたね。もう少しポップな感じの依頼を想定していたので。こういうのが来るんだって驚きもありました」  その後ちらほらと依頼が入るようになるものの、どれも小林さんが考えていたようなものではなかった。「遠距離の彼女にプロポーズしたい」「離婚協議中だが復縁したい」「病気の妻に感謝を伝えたい」など、どれも“ポップ”とは言い難い内容だ。 「シリアスな依頼が続く中で、『この仕事は思っていたのと違うな』と感じるようになりました。代筆屋を始める前にどんな依頼が来るか知っていたら、怖くてできなかったと思います。貰った側は僕が書いたと知らないので、本人が書いたと思うわけですよね。何年、何十年と保管されるかもしれない。責任の重さを感じるようになりました」  代筆屋の仕事とは何か。それを改めて考えるようになってからは、仕事のあり方にも変化が生まれた。依頼人をより理解し、“その人に合わせた文章”を書くようになったという。そのために大切にしているのが、ヒアリングだ。 「依頼人に対してどれだけ共感できるかで、代筆に向かう自分の気持ちのもっていき方も左右されます。だからギリギリまで相手を知る努力をする。それが基本スタンスです。人の心や感情って完全には理解できないものだけど、だからって理解を放棄したくないので。こんなご時世なので中々難しいですが、なるべくオンラインより直接会ってお話を伺うようにしています。そのほうが理解が深まって依頼者に対する思いも強くなり、書く時にも集中しやすいですね」
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「気持ち悪い仕事だな」と批判の声も
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福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0、Instagram:@0ElectricSheep0

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