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28年ぶりの紅白出場へ。歌手としての篠原涼子が放つ「独特の色気」の正体

わずか2作目にして小室哲哉が篠原涼子に託した曲

篠原涼子

『もっと もっと・・・』篠原涼子with t.komuro/Sony Music Entertainment Inc.

 そして大ヒットの次が3連のシャッフルビートのバラード「もっと もっと・・・」(1995年2月8日リリース)でした。ダンサブルな前作とは全く違った曲調。小室哲哉は本格的に歌を聞かせるための曲を作ったのですね。 「抱いてくれたらいいのに」(工藤静香)のようなリズムアンドブルース風のアレンジは、歌手の素地がもろに出てしまいます。それは歌唱力とは違って、人を惹きつけるものがあるかどうかの勝負。「もっと もっと・・・」は、その意味で大変に厳しい曲だったのです。  それは小室哲哉自身にとってもチャレンジだったのではないでしょうか。TKプロデュース作品を振り返っても、ここまで真正面から歌謡曲然とした楽曲はないからです。わずか2作目にして篠原涼子に託したことの意味は、決して小さくないはずです。

言葉の意味の裏側が伝わるように、静かに盛り上げる歌い方

 最後に、映画『ベル・エポック』の主題歌「a place in the sun」(1998年10月1日リリース)も忘れがたい一曲です。小室プロデュースから離れて3年後に生まれた最高のバラード。  開放感のあるハーモニーと伸びやかなメロディラインは、どうしても声を張り上げて歌いたくなります。でも篠原涼子は抑えるのです。言葉の意味の裏側が伝わるように、静かに盛り上げる。  残念ながらほとんどヒットしませんでしたが、キャリアの集大成と言いたくなるほどの名演でした。
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歌手・篠原涼子の「見えざる魅力」
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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