年末年始の挨拶、伝統的な食べ物と占い
★季節の挨拶はクリスマスカードで
日本では新年の挨拶に年賀状を出すが、オーストリアでは12月に入ると多くの人がクリスマスカードを送る。クリスマスカードにはクリスマスを祝う言葉だけではなく、新年に向けてのお祝いの言葉も入っていることが多い。生活する上での難点は、元々あまりいいとは言えない郵便事情が一気に悪化することだ。
★年末の特別な挨拶
クリスマスから年末にかけては「Guten Rutsch(グーテン ルッチェ)」と挨拶をし、新しい年に向けて相手の幸せを願った挨拶をする。「Gute(n) =良い」「Rusch=滑る」という意味で、直訳すると「良い滑りを」となるが、「Einen guten Rutsch ins neue Jahr」を短くしたもので、その意味は「新年にいい滑り込みをしますように」から「良いお年を」という意味合いの挨拶になる。
★年末年始の特別な食べ物
クリスマスにはクッキーを食べる習慣があるオーストリア。お節と同じように、クリスマスクッキーにはそれぞれの家庭の味があり、少なくても6~7種類はある。どこの家でも大量に作り、友人にプレゼントしたりしてもまだたくさんあるので、年末年始を迎えても未だにクリスマスクッキーを食べ続けている家は多い。クリスマスには特別な料理を……ということで魚料理(多くは鯉やトラウトなど)を食べる家庭も多いが、年末年始、お正月には特にこれ!といった決まった料理はない。
★新年の運を占う遊び「ブライギースン」
大晦日に新年の幸運を占う「ブライギースン」というものがある。これは古代ギリシャや古代ローマ時代の神託儀式まで遡る歴史があるが、現代はもっと一般的になり単に新年の幸運を占う遊びとなっている。
鉛や錫(スズ)の塊をスプーンに乗せ、火であぶって溶かし、それを冷たい水の中に投げ入れて出来た形で運命を予想するのだ。大晦日のカウントダウンパーティーで友達と集まってみんなで楽しむものだが、鉛が健康に与える影響から2018年以降、鉛の使用は禁止された。今では、錫やワックスなど身体に無害の材料のものが出まわっている。
特設スタンドに並んでいる新年のラッキーモチーフのチャーム
年末には新年のラッキーグッズが売られていて、プレゼントし合うのが習わし。ラッキーグッズはこれ!というものではなく、ラッキーアイテムのモチーフとされるものを使った様々な商品が出回っている。
四葉のクローバー、テントウムシ、煙突掃除の人、豚、キノコなどが新年のラッキーモチーフとされていて、お菓子などのパッケージや、カフェのスイーツ、チャームやデコレーションなど、その商品の種類は多い。四葉のクローバーの鉢植えも販売される。前述のニューイヤーマーケットで売られているほか、年末くらいから新年にかけては市内に多くのラッキーアイテムを売る屋台も出る。
老舗カフェDEMEL(デメル)のスイーツ。豚は子だくさんを象徴するシンボルとされている
スーパーで売られている四葉とテントウムシのチョコレート
キノコを抱えた煙突掃除屋さんが飾られた四葉のクローバーの鉢植え。これだけでラッキーモチーフが3つも!
これだけたくさんの四葉のクローバーがあると、幸せが訪れる事間違いなし!
日本でも「幸せの象徴」と言われている四つ葉のクローバーだが、オーストリアでも同様にラッキーモチーフなのである。2023年が健康で幸多い1年になりますように。
<文・写真/バレンタ愛(海外書き人クラブ)>
2004年よりウィーン在住。うち3年ほどカナダ・オタワにも住む。長年の海外生活と旅行会社勤務などの経験を活かし、2007年よりフォトライターとしても多数の媒体に執筆、写真提供している。著書に『カフェのドイツ語』(三修社)、『芸術とカフェの街 オーストリア・ウィーンへ』(イカロス出版)など。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「
海外書き人クラブ」会員。