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運休続出で到達難易度MAX…極寒の「日本最北の秘境駅」に行ってみた

―[シリーズ・駅]―
 日本最北端の駅として鉄道に興味のない方でも一度は名前を聞いたことがある稚内駅(北海道稚内市)。しかし、この駅の2つ手前に“日本最北の秘境駅”があることは一般にはあまり知られていない。  その駅の名は抜海駅(北海道稚内市)。まだ雪に覆われていた極寒の2月上旬に訪れたこの駅は北海道内でも屈指の到達困難駅。旭川~稚内を結ぶJR宗谷本線は、大雪などにより冬場の運休が特に多い路線として知られているからだ。
抜海駅

秘境駅にしては立派な駅舎だが屋根には氷柱が

上下線合わせて1日たったの7本

 実は、これまでに二度冬場の訪問を計画したことがあったが、いずれも大雪で断念。今回も稚内入りした前日にかなり雪が降っていたので不安だったが、当日は始発から大きな遅れもなく筆者が乗り込んだ1両編成のワンマン列車も定刻通り10時28分に稚内駅を出発した。  抜海駅までは約18分と比較的近いが、同駅に停車するのは普通列車のみで上下線合わせても1日たったの7本(※23年4月現在)。下車した場合、次の上り列車が来るのは18時台で7時間半以上待たなければならないが、稚内に戻る下り列車なら約1時間後なので今回はこれを利用することに。だが、抜海駅は北緯45度より北に位置し、訪れた日の気温は日中なのにマイナス10度。下車後はすぐ出発する列車の様子を撮影していたが、数分と経たないうちに寒さで指と耳が痛くなってしまった。

ロケ地としても有名

抜海駅

国鉄時代そのままの雰囲気を残す抜海駅の改札口

 ちなみに平屋トタン屋根の駅舎は、何度も改装が行われているようだが開業した1924年当時の面影を今に残す。大正末期に建てられた日本最北の木造駅舎だ。  改札口の引き戸はかなり立て付けが悪くなっていたが、こんな年代モノは滅多にお目にかかれない。戸を閉めるのに少々手間取ってしまったが、これも貴重な体験だ。  そんな抜海駅は高倉健主演の映画『南極物語』(83年)や小泉今日子主演の連続ドラマ『少女に何が起こったか』(85年)といった往年の名作のほか、吉永小百合や堺雅人らが出演した映画『北の桜守』(18年)のロケ地としても有名。特に北海道の秘境駅は、古い駅舎を取り壊して貨車を改装した簡素な待合室を置いただけの駅も少なくない。だからこそロケ地としても重宝されるのだろう。
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秘境駅だけど1日の平均利用客は2人
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フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。

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