2014年~2021年のわずか7年間で約100駅が廃止されたJR北海道。今年も
3月12日のダイヤ改正に伴い、その前日をもって新たに7駅が廃止となった。こうした駅を訪れる者は、鉄道ファンの間では「
葬式鉄」と呼ばれているが、今回は筆者がこれを体験。北海道でこの春、営業を終了する駅をすべて巡ってみることにした。
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①歌内駅
歌内駅
21年3月、大量12駅がなくなった日本最北路線の宗谷本線では、前年ほどではないが今年も1駅が廃止。それが1950年代に製造されたヨ3500型貨車を改装した駅舎が特徴の歌内駅(北海道中川町)だ。
列車は上下線ともに1日3本ずつと極端に少なく、今回は特急停車駅の隣の天塩中川駅で下車。そこからタクシーで15分ほど天塩川沿い走る道道541号線を北上すると、小さな十字路が見えてくる。ここを右折した先に歌内駅はあった。
この辺りは70年代までは駅前通り沿いに家が立ち並んでいたそうだが、現在はわずか2世帯という完全な限界集落。コンビニや商店はもちろん、自動販売機すらない。
白地に水色のラインが入った貨車駅舎も錆びだらけで、いかにも北海道の秘境駅という感じだ。駅の反対側は森になっており、エゾジカやキタキツネも出没するとか。実際にそれらしき足跡はあったが、残念ながら遭遇はできず。いずれにしても住民よりも獣の数が多いのは間違いなさそうだ。
そんな同駅の平均利用者数は1日1人以下。ところが、この日は先客が2名。いずれも首都圏から来た鉄道マニアで、北海道の秘境駅巡りをしているとのこと。鉄道談義で盛り上がり、うち1名からは筆者が後で訪れようと思っていた廃止予定駅にもすでに立ち寄ったそうで、アクセスに関する貴重な情報を教えてもらった。こうした旅先での出会いや情報交換も鉄道旅の魅力のひとつかもしれない。
池田園駅
次に向かったのは、函館から鈍行で1時間ほどの函館本線砂原支線の池田園駅(北海道七飯町)。実は、函館本線は大沼駅~森駅の間が“渡島富士”の愛称で知られる駒ヶ岳の左側を走る本線、右側を走る砂原支線に分岐している。
しかし、この砂原支線は利用者が少なく、今回の廃止7駅中3駅が同路線に集中。池田園駅は観光地としても知られる大沼の畔に位置し、駅周辺には多くの別荘が立ち並んでいる。彼らはほぼ車で来るため、利用客はいないようだ。
無人駅ながら駅舎は地方のローカル駅では標準的な規模で、ホームの間には跨線橋も架けられている。廃止とするにはもったいない気もするが、利用客がいなければ維持費が余分にかかるだけ。JR北海道の厳しい経営事情を考えれば仕方のないことなのだろう。
なお、訪れたのは夕暮れ時だったこともあり、跨線橋からの眺めはなかなかの絶景。この景色がもう見ることができないのは惜しい気もするが……。