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運休続出で到達難易度MAX…極寒の「日本最北の秘境駅」に行ってみた

秘境駅だけど1日の平均利用客は2人

抜海駅

駅構内。鉄道ファンが寄贈したぬいぐるみや駅名票風の色紙が飾られている

 駅構内は広さ20畳ほどのスペースで、窓際には4人掛けのベンチが1つ置かれているだけ。無人駅なので窓口もなければ券売機もない。それでも訪れた人たちがメッセージなどを書き込む秘境駅の定番「駅ノート」はもちろん置いてある。  しかも、その周りには訪れた鉄道ファンが寄贈したのか駅のイラストや駅名票を書いた色紙、そしてなぜか16~19年にNHK Eテレで放送されていたアニメ『少年アシベ』でおなじみのゴマちゃんのぬいぐるみも飾ってあった。  気になって後で調べてみると、駅から2kmほど離れた場所にある抜海港は、毎年ゴマフアザラシが越冬のために姿を現すスポットで、それにちなんでのことのようだ。でも、ここまで列車の本数が少ないと、JRを利用して鑑賞しに来るのは難しいかもしれない。  なによりJR北海道が公開した『駅別乗車人員』によると、17~21年の平均乗車人数は平日で1日2人。駅前通り沿いに民家が1軒あるが、ここは駅の半径500メートル以内に住んでいる唯一の世帯。ひょっとすると港周辺の集落の住民が利用しているのだろうか?

来年の駅開業100周年を迎えられるかは未定

抜海駅

雪の中、まっすぐ伸びる線路はまるで海外のような光景だ

 なお、宗谷本線には同時期の平均乗車人数が0人という駅が5つもあり、それに比べればマシかもしれない。ただし、そんな抜海駅もこれまで廃止の話が何度も持ち上がっており、道内の地元紙などでもたびたび取り上げられている。  19年に廃止の話が持ち上がり、このときは地元・稚内市が管理維持費用を負担する形で一度は回避。ところが、それも今年度までで24年度以降は未定となっている。  そこで地元町内会がネット上では1年分の管理維持費100万円をクラウドファンディングを募集(※受付終了)。自治体もしくは有志たちの負担で存続するのか、それとも廃止になるのか現時点では定かではない。  駅は利用客がいてナンボとはいえ、駅舎は文化財や鉄道遺産に指定されてもおかしくないレベル。来年、節目となる開業100周年を無事に迎えられるといいが……。 <TEXT/高島昌俊>
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フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。

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