更新日:2023年04月12日 15:42
エンタメ

坂本龍一氏が日本の音楽に与えた影響を振り返る。国民的大ヒット曲の編曲も

 

②「夢の中で会えるでしょう」高野寛(NHK教育TV・土曜ソリトン SIDE-B)

 シンガーソングライターの高野寛と俳優の緒川たまきが司会を務めたカルチャー番組(1995-1996)での忘れられないセッションです。  高野寛によるクリーントーンのカッティングに、坂本龍一のピアノが完璧な合いの手を入れていく。たった2つの楽器から、無数のハーモニーが溢れていく演奏は、単純に“プロってすげぇ”と思わせるパフォーマンスでした。  そしていま改めて聞くと、坂本龍一は演奏をつなぎ合わせることでリアルタイムにアレンジをしているのだと気付かされます。前に弾いたフレーズの意図を次のフレーズが汲んでいる。それが繰り返されることで、メロディや楽器の音が文章のようなストーリー性を帯びてくるのですね。高野寛の歌や詞にさらなる行間と余韻を作る演奏。  あえて言うならば、調性のルールを遵守したフリージャズ。坂本龍一が示した歌モノの可能性のひとつだったのではないでしょうか。

③「めだかの兄妹」わらべ

 最後は1980年代の国民的バラエティ『欽ちゃんのどこまでやるの!』から生まれた国民的大ヒット曲。作詞・荒木とよひさ 作曲・三木たかしのゴールデンコンビに、坂本龍一が編曲で参加しています。  これをどうこう分析するのは無粋というもの。お茶の間が思い切り楽しんだ事実が作品の成功を物語っているからです。本人も“なぜオファーがあったのかわからない”と語った異色の組み合わせですが、言われなければ気づかないくらいに姿を消すことも優れたアレンジャーの能力のうち。  そこに坂本龍一の名前があることに大きな価値があるのです。
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槇原敬之の才能も見抜いた
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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