更新日:2023年05月19日 19:35
仕事

「60代からフリーランス」失敗する人と成功する人の差とは?

60代からのフリーランスで失敗する人とは?

 これだけ60代とフリーランスの馴染みの深さを挙げると、「60代からのフリーランスも案外おすすめなのでは?」と思うかもしれないが、そこには落とし穴もある。  そもそも仕事を発注する側との関係が雇用関係でないということは、雇用保険や会社の健康保険といった社会保険もなく、福利厚生なども社員とは異なる可能性がある。労働時間や休日、解雇などに関する法制度も適用されない。当然、契約が延長されないリスクもあって会社員に比べて収入は不安定だ。  また、これまでフリーランスも副業も経験がなく、正社員一本で過ごしてきた人物がいきなりフリーランスにチャレンジするとしたら、失敗の可能性が高くなる。  私たちシニアジョブが就職を支援する求職者の平均年齢は、60代前半だ。60歳定年でその後の再雇用の条件に不満がある人、再雇用ではなく他社への転職を選んだが結局合わなかった人、さらに独立やフリーランス化に失敗した人も含まれる。  会社員とフリーランスでは先に述べた制度の違いだけでなく、時間の使い方や事業主としての信用力まで大きく違う。独立したものの、バックオフィスがなくて様々な事務作業に忙殺される、会社の看板が外れたことで営業や交渉がうまくいかないといった状況になる人も少なくない。

結局60代はどうフリーランスを目指せばよいか

 では、60代からのフリーランスへのチャレンジを安全に行うには、どうすればよいのだろうか?  フリーランスに限らず、転職にも共通する陳腐なアドバイスだが、やはり経験と準備に尽きる。可能ならば、60歳になる前から副業などでフリーランスを体験しておきたい。業務支援システムや会計システムの会社、フリーランスのお仕事マッチングプラットフォームなどが開講するフリーランス向けのセミナーも増えており、それらへの参加も含め、準備も時間をかけておきたい。  また、会社員として勤めながら副業でフリーランスをやるのもオススメだ。私たちが支援するシニア人材にもこうしたケースは多い。パートの求人に応募してきた60代が、実は個人事業主や企業の経営者としてメインの仕事を持っているケースなどがかなり見られる。  改正高年齢者雇用安定法の制度で、それまで会社でやっていた仕事を65歳からフリーランスとして請けられる会社なら、それに手を挙げるのも失敗しにくい。会社はシニア社員をフリーランスにする計画をハローワークに提出しているし、よほどひどい仕事をしなければ70歳まで契約を続ける前提である。何より慣れ親しんだ会社の仕事なので失敗しにくい。  いずれにせよ、失敗を恐れずチャレンジする姿勢は必要なものの、「背水の陣」はおすすめできない。60代ともなればフリーランスであっても、すべてを投げ打ったチャレンジよりプロとしての堅実な事業計画が求められそうだ。<文/中島康恵>
50代以上のシニアに特化した転職支援を提供する「シニアジョブ」代表取締役。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓う。シニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中
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