仕事

ネガティブな理由で職場を去る人の心理とは?1万人のストレス研究でわかった「人が悩む根本理由」

ストレッサーを「なぜ」で掘り下げて考える

 これまで私は、現在の職場に疑問を感じ転職や退職を考えている多くの人たちの相談に乗ってきました。転職や退職は、タイミングやマインドさえ間違えなければ、新たな可能性として良い選択肢になり得ます。  たとえば、ある仕事を極めたいという意志が明確になってきたが、今の職場ではそのためのスキルが身につかないというとき、転職や大学院進学などの道を選ぶことはポジティブな転職・退職といえるでしょう。  では、ネガティブな転職・退職とはなんでしょうか。ここでいうネガティブな退職とは、職場のストレッサー(人間関係や仕事内容など)が原因で、とにかく職場を去るために転職や退職をすることです。  このように職場を去ることを一番の目的としている人には、ストレッサーを「なぜ」で掘り下げて考えてもらうようにしています。

オーナーとの人間関係がうまくいかない場合

仕事 私は、オーナーとの人間関係がうまくいかないと訴えるDさんに対して、「なぜそのように思うのですか?」と問いました。その回答は「オーナーは私が意見すると不快な態度をとるようになったからです」という表面的な内容で深掘りする余地があったので、「なぜ」の問いかけを続けていきました。回答に深掘りできる余地がある間は、クライアントはモヤモヤしたものを抱えているからです。 「なぜオーナーはDさんが意見すると不快な態度をとると思いますか?」と質問したところ、「私は黙って指示に従っていればいいと考えているからだと思います」という回答が出てきました。Dさんは、ここで初めて自分が(オーナーから)大切にされていない、つまり、認められていない・必要とされていないことに対してモヤモヤしていたことに気づいたのです。  このように「なぜ」で掘り下げていく過程は、この環境をなぜ自分はストレスと感じたのか、心の奥にある理由や感覚を知るために必要です。この理由を突き詰めることなく会社を辞めてしまうと、次にまた似たような状況になったとき、同じような理由で退職することになるからです。 「自分にとって大切にされていないとは具体的にどういうことを指すのか」「職場や上司などから大切にされたり尊重されたりするために自分が組織に貢献できることはなにか」と掘り下げて考えることで、ポジティブな転職・退職に繫がっていきます。
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組織で「大切にされている」と実感できているか
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ストレスマネジメント専門家。企業人事部や病院勤務(精神科・心療内科)などを経て、現在、株式会社メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー)副社長。カウンセラーとして約1万人の相談に対応し、中央官庁のメンタルヘルス対策や県庁の研修にも携わる。著書に『「なんとかなる」と思えるレッスン 首尾一貫感覚で心に余裕をつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある

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