ローファーや、スリッポン同様に、中敷きを使ってはいけないのが、プレーンパンプスです。そもそも、インステップポイントとなるタンパッドを貼る場所がないパンプスは、「歩くギア」としては成立していません。 それでも職場のルール上しかたなく履かなければならない場合は、甲周りをおさえるバンドがおすすめです。Perfumeのメンバーもライブのパフォーマンスでは、かなりの確率で透明なバンドを使ってハイヒールでダンスしていますので、説得力のある話だと思います。 OLの方などはジェル状のハーフソールを中に貼る方も多いのですが、直に足の裏に接するので思った以上に不衛生で、しかもあっというまに汚くなって見た目の印象も悪くなります。つま先に負担もかかるので、バンドのほうが効果もコスパもいいでしょう。 しかし、「成長期まっさかりにローファー」、「仕事にハイヒール」という謎ルールにはシューフィッターとしてはうんざりです。歩くことが前提なら、紐靴かベルトなどで甲を押さえられ、かつ調節できるものが絶対です。ABCマートの「マジ軽ローファー」はとてもよく考えられていて、見た目は日本一有名な学生ローファーの某メーカーとそっくりなのに、タンパッドとアンクルパッドが仕込まれていて、まったく靴ずれしません。 中敷きも外れるので簡単に洗えて衛生的ですし、偏平足のかたなどは専門のインソールにカスタムも可能なので、足の成長をさまたげません。「学校指定のローファーがあわない」「痛くて足をひきずっている」というかたには、こちらを強くおすすめします。 他方、「仕事用のハイヒールが合わない」方にはこれといったおすすめがないのが頭痛の種です。ハイヒールは、ファッションとしては欠かせませんから、存在自体は否定しません。しかしあくまでも「魅せる」靴であって、けっして「歩く」ための靴ではありません。大事なのは「歩く靴」なのか「魅せる靴」なのか、買うほうも売るほうも考えましょうということです。今は昭和ではなく、令和なのですから。 こまつ（本名・佐藤靖青〈さとうせいしょう〉）。イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『シューフィッターこまつ　足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます。「毎日靴ブログ＠こまつ」