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大量閉店「庄やグループ」。苦しい懐事情の原因の一つに日本人の“魚離れ”

「酒離れ&魚離れ」で業績悪化…

コロナ禍で200店舗以上閉店した大庄ですが、実は以前より長期で業績悪化が続いていました。2008年8月期に売上高897億円、全店舗数762店と過去最高を記録して以降、売上高は徐々に下がり続け、2014/8期には731億円、コロナ前の2019/8期には610億円に。 店舗数も2019/8期には616店となっており、2008/8期より約150店舗も縮小しています。この間、営業利益は赤字と黒字を行き来し、低調に推移しました。 業績悪化の原因として第一に日本人の酒離れがあげられます。様々な統計でも示されているように1990年代と2000年代を比較するとほぼ全ての年代で飲酒量や飲酒の習慣が減っており、居酒屋市場全体の縮小が続きました。居酒屋御三家に代わって台頭してきた新御三家(モンテローザ、ワタミ、コロワイド系列)も居酒屋事業の業績が悪化しています。 二つ目の理由は日本人の魚離れです。庄やは確かに魚メニューに力を入れていますが、魚を食べる習慣が減ってしまえば需要も無くなります。 日本人一人当たりの魚介類消費量は2001年をピークに、肉類に置き換わる形で減少し続けました。つまり、大庄の業績は市場環境の変化に抗えず悪化した形です。

4割以上の店舗が閉店し、中小企業扱いに

そして大庄は多分に漏れずコロナ禍で大打撃を受けました。2019年/8期から2022/8期までの業績推移は次の通りです。 【株式会社大庄(2019年/8期~2022/8期)】 売上高:610億円→448億円→288億円→380億円 営業利益:7.3億円→▲33.1億円→▲59.5億円→▲53.9億円 全店舗数:616店→586店→436店→385店 他の居酒屋チェーン同様、コロナ禍では外出自粛のほか時短営業、休業により業績が大幅に悪化しました。庄や、日本海庄や、大庄水産などいずれのブランドも店舗数を縮小。グループ全体で3年間で200店、実に4割以上の店舗が閉店に追い込まれました。 飲食事業の他に卸売事業や運送事業も手がけていますが、卸売事業は自社チェーンに対する売上高が大半を占めており、飲食事業の悪化に伴って収益が減少しました。運送事業においては会社全体に対する規模が小さいため全社業績を支えるには至りませんでした。カラオケ事業も経営資源を集中させるべく店舗の大半が売却されました。 資金面では、銀行とのコミットメントライン契約により手元の資金を確保しましたが、自己資本比率は50%台から30%弱まで落ち込んでいます。また、税制面での優遇を得るため2020年には資本金を86.2億円から1億円へと減資し、中小企業扱いとなりました。
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以前の水準には回復できない?
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経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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