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ボロ物件の大家が語る“ワケあり”な入居者たち。元ヤクザ、元受刑囚、自己破産者…

 ワンルーム投資に一棟貸し、ボロ物件投資…世の中にはさまざまな大家が存在するが、なかでも最近注目を集めているのが「元受刑囚、生活保護受給者、自己破産者、DV避難者など、少々ワケありな人々に部屋を貸す大家」だ。近年、こうした入居者は「住宅確保要配慮者」として政府も支援に力を入れており、7月から国土交通省や厚生労働省、法務省の合同検討会が始まった。では、実際、そうした人々に物件を貸す大家の実態はどうなっているのか。7月に刊行された話題の本『エクストリーム大家』から一部を抜粋し、クセの強い入居者とのやりとりを紹介しよう。

ネット経由で連絡してきたおじさん「明日から住みたい」

貧困 男性

写真はイメージです(以下、同)

 エクストリーム大家業では、一般的な大家業では味わえない心温まる経験をすることも少なくない。それがあるからこそ、私はエクストリーム大家業を続けているのかもしれない。 「大家さんでっか? ワシ、ネットで大家さんの物件見て、住みたいな思いましてん。明日どうでっか? すぐ行きまっせ!」  リフォームを終えた物件をネット(「ジモティ」などの個人間取引プラットフォーム)で客付けしていた際のこと。早速、メールにて問い合わせがあり、急ぎ話を聞きたいというので私は電話番号をメールで折り返した。それから約10秒後、冒頭のように話す年配の男性の声が私の耳に響く。その勢いに私は圧倒されそうになった。 「いや、明日て……。というかどこからですか? 神戸の方?」  人はどうしても自分の取り巻く環境で物事を判断する癖がある。私も例外ではない。今日話して明日での対応となると、商売人としてはありがたいが、いささか疲れる。また急な話の展開は、過去の経験則から得てしてトラブルになりやすい。物事は慎重に進めるほうが、その後がいい結果になることが多い。  電話で話した印象では、悪い人ではなさそうだ。だが、何かが気になる。それは私が生まれ育った関西とは違うイントネーションだったからだ。九州弁か、それとも広島弁か。ただ時折、関西弁や標準語も混じっている。 「えっ、いや福岡ですわ。いやね小指、彼女がね、別れた彼女がね、博多に住んどったんですけど、まあ別れてね。それでもう博多には用なしちゃ。それで次はどこに住もうかと考えとったら、港町・神戸もええなと。昔、住んでたことあるしね」

「ワシ、B2持ってますねん」

 私は単刀直入にどういう状況かを問うた。生活保護受給者なのか、金融ブラックなのか、どちらでもないグレーゾーンなのかもしれない。そこが気になった。 「あっ、ワシ? (生活)保護ですわ。ええ。B2持ってますねん。あと聴覚とか身体障害もね。家賃とかはご迷惑はおかけしませんよ!」 「B2」とは軽度の知的障害の等級である。ハンディキャップを持っているなら、今は行政が手厚く保護してくれる。平たく言えば手当はある。ゆえに入居させて損はないと、この男性は私に告げているのである。  職人が親方に雇い入れを求めて「ワシ、こんな資格持ってますねん」「ワシ、防水工も左官もできまっせ」とアピールしているのと似ている。 「福岡? 遠いでしょう? 明日来るというても交通費かかるし……」  正直なところ私はこの日、用事もあり内覧は翌週に持ち越してほしかった。だが、来るという入居希望者を拒むわけにもいかない。 「いや、カネなら、交通費なら大丈夫。なんかの手当が入りますし、交通費、ワシ、半額やさかい……」
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ガラガラに辛子明太子とひよこ饅頭を詰めてやってきた
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1971年、兵庫県生まれ。2010年頃に初めて物件を購入し大家デビュー。2018年、大家業を営んでいた実母の死去に伴い、複数の物件と入居者を相続し引き継ぐ。本業はライター/フリージャーナリスト。別名義で『週刊SPA!』(扶桑社)、『AERA』(朝日新聞出版)、『週刊ダイヤモンド』『ダイヤモンド・オンライン』(以上、ダイヤモンド社)、『現代ビジネス』(講談社)など週刊誌やウェブメディアに寄稿。金融経済、防衛、労働問題に詳しい。著書多数。現在、文筆業の傍らクセのある入居者相手に奮闘する日々を過ごしている。
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エクストリーム大家

ワケありな人たちに部屋を貸す大家の
刺激的な日々を大公開

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