更新日:2023年08月23日 16:31
仕事

“カキにあたらない時代”がついに到来か。「中毒の原因」を取り除いた企業の執念

「汚染された海水を使わない」完全陸上養殖への挑戦

 カキの完全陸上養殖は過去にも試みた事例が存在するが「ほぼ不可能」とまで言われていたという。それには乗り越えなければならない大きな問題がふたつあったからだ。そのひとつがエサの問題だ。 「カキは短時間で大量の水を吸って吐くため、エサも大量に必要なのです。海中ならばカキのエサとなる微細藻類(植物プランクトン)が無限に存在します。しかし陸上には当然それがありません」  本来コストゼロのはずのエサ。有料飼料を使っていたのではコストが跳ね上がってしまう。  もうひとつは温度の問題だ。 「カキの成長には“冬”が必要なのです。カキは暖かい時季にたくさんのエサを食べて、寒い時季に身を成長させるのです」  陸上での温度コントロールは難しい。機材などを用いると膨大な電力を消費しなければならず、簡単にはいかないのだという。  エサとなる微細藻類を培養するには暖かい気候が、カキの生育には冷たい海水が必要なのだ。この相反する条件を満たした環境を作らなければならなかったのである。

ふたつの問題をクリアする「海洋深層水」の存在

カキ

「完全陸上養殖」は世界初だ

 このふたつの問題を解決するために着目したのが海洋深層水だ。 「海洋深層水は水深200メートル以深の海水で、太陽光が届きません。表層の海水と混ざることがないため、清浄性と低温安定性が極めて高いのです」  つまり海洋深層水をカキの飼育海水として使用することで、確実に安全性を高めることができるというのだ。太陽光が届かない水深200メートル以深には一年を通じて温度の低い海水が存在している。  この特性は、海洋温度差発電にも利用されており、清浄性が保たれた発電後海水も飼育海水として使用するなど、持続可能な陸上養殖の研究にも取り組んだ。
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“一度も海の中で過ごしたことのないカキ”が誕生
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ライター&編集者。日本唐揚協会認定カラアゲニスト。「からあげの聖地」である大分県中津市出身。専門店だけでなく、居酒屋、食堂、スーパーなどで唐揚げを見つけては食べてみる「から活(からあげ探索活動)」を継続する一方、話題食などの食レポ記事も執筆する。

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