更新日:2023年08月23日 16:31
仕事

“カキにあたらない時代”がついに到来か。「中毒の原因」を取り除いた企業の執念

“一度も海の中で過ごしたことのないカキ”が誕生

 また海洋深層水は栄養性に富んでいる。ゼネラル・オイスターは東京大学生物生産工学研究センターと共同で研究を始め、海洋深層水の清浄性と富栄養性を活用した微細藻類を大量かつ安定的に培養する技術の確立に成功した。  2014年から約10年の歳月をかけ、清浄性やエサ、温度の問題をクリアして海洋深層水を活用した世界初のカキの完全陸上養殖に成功する。「それはひとつの方程式を作ったにすぎない」と吉田氏は話す。 「本来は海の中で自然に育つものです。カキの生育段階などを考慮しつつ、どのタイミングでどんな種類のエサをどれだけ与えればよいのか、そこからさらに試行錯誤を繰り返して“一度も海の中で過ごしたことのないカキ”を作ることに成功しました

「味のアレンジ」もできてしまう

 そのような研究や試行錯誤の末に生み出された“あたらないカキ”『エイスシーオイスター2.0』だが、あたらないこと以外にどんな特徴があるのだろうか。 「まだ研究段階ですが、与えるエサによって味わいが変わると考えています」と吉田氏。カキは生育場所の海水に含まれる養分によって味が変わると言われる。 「海中養殖の場合、付近の河川や山などから流れ込む養分によってある程度味が固定されてしまいますが、完全陸上養殖ならばその部分もアレンジしていくことができます」  なんと味のスペックにバリエーションをもたせることができるようだ。  前述の通り、カキは温暖な気候と冷涼な気候を兼ね備えた環境でなければ生育ができなかった。そのためカキ養殖は一部のエリアに限定されていたが、ゼネラル・オイスターが開発したシステムを活用すれば「今後は赤道直下の国でもカキ養殖は可能」だという。またカキといえば冬の味覚というイメージがある。 「たしかに真ガキの場合は温度が上昇する時季は産卵期に入るため、身痩せして味が落ちてしまいます。しかし温度コントロールが可能になるので、一年中おいしいカキを出荷できるようにもなります
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いずれは地域や時季を問わずカキを楽しめるように
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ライター&編集者。日本唐揚協会認定カラアゲニスト。「からあげの聖地」である大分県中津市出身。専門店だけでなく、居酒屋、食堂、スーパーなどで唐揚げを見つけては食べてみる「から活(からあげ探索活動)」を継続する一方、話題食などの食レポ記事も執筆する。

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