そんな酷い状況だったため、もちろん店長にも伝えていたようだが、特に対策を講じてくれることはなかったという。鈴木さんは「ビルの共有スペースでの話だったので、今思うと店長に報告してもどうしようもなかったのかもしれませんね……」とフォローしつつも、ゴキブリまみれのロッカーには一切立ち入ろうとしなかった店長に対して不満に思っていたようだ。 「たぶんですけど、店長も大のゴキブリ嫌いですよ。だって、店長はその更衣室を一切使わず、近づこうとすらしませんでしたから。飲食店の各店舗に、事務作業ができる一畳くらいの小部屋があるのですが、着替えはそこでしていました。僕だってそこで着替えたかったですが、スペースの問題もあって『バイトはロッカーで着替える』と決められていたんです。店長だけズルいですよね。こっちは毎回『ゴキブリ落とし』をしてるっていうのに(笑)」 　一向に減らないゴキブリと、自分の立場を利用し危機回避する店長。そんな状況が続いた末、一緒に殺虫剤を撒いたバイト仲間が遂に立ち上がり、ビルの管理会社にアプローチをしたようだ。だが、それもすんなりとはいかなかったと鈴木さんは語る。 「そのビルには、そこで働く従業員なら誰でも投稿できる目安箱的なものがあったんです。投稿された内容は、9階にある従業員食堂の前に、ビルの管理側のコメント付きで貼り出される仕組みでした。そこで、限界に達したバイト仲間が『7階の男子更衣室のゴキブリをなんとかしてください』って投稿したんですが、何日たっても貼り出されないんですよ。しばらくして、もう一度投稿したのに音沙汰はなし……。なんのための目安箱だって話ですよ。今思うと、他の従業員に『7階にはゴキブリがいる』ってことをバレたくなかったのかもしれませんね」