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「日本にいたい」と涙ぐむ子供たち。在留資格の特例からこぼれた子の苦悩

「自分の故郷は日本です」

南アジア系の中学生男子は、日本生まれで本来なら在留資格をもらってもいいはずだが、両親が不法入国のため、今回の資格には該当しない。 「自分の故郷は日本です。友達は日本人で、考えるときは日本語です。(両親の)国のことは何も知りません。お父さんが難しい病気(潰瘍性大腸炎)で、いつも薬を飲んでいます。母国には治療法がありません。国に帰されたら、父親が命を落とす可能性が高いです。 将来の夢はデザイナーです。家族と一緒に日本で暮らしていきたいです」 彼の父親は、「子供はもうすぐ高校に入る。できるだけ一人で頑張っているがサポートが必要。これから高校に入るからさらに(経済的にも)大変になる。他の皆さんも同じ。みんなにビザをいただければ……許していただきたい。ビザだけあればありがたい、もらえたら頑張ります」と語る。
フィリピン人の母親

「子供の心は日本人です」と語るフィリピン人の母親(右から2人目)

フィリピン人の母親も参加し発言をした。この家族を担当する笹本弁護士は、「子供もビザがないが、日本語しか喋れない。無理やり帰せば子供の精神状態に影響がある旨を、医者に意見書として書いてもらい、入管と裁判所に提出したが、受け入れられることはなかった」と話す。 今回、集会に立憲民主党から石橋通宏議員、鎌田さゆり議員、 近藤昭一議員、共産党からは本村伸子議員、社民党から福島瑞穂議員、5名が参加した。 議員らは、取りこぼされる子供たちがあってはならないと弁護士、支援者、当事者への連帯を示した。

SNSでの中傷に苦しむ子供たち

子供たちの苦境は、在留資格の問題だけではない。周囲からの偏見にも心を痛めている。 たとえば、クルド人に向けてSNS上での誹謗中傷は後を絶たない。 「Twitter(現X)でクルド人の悪口を言われているのを見てとても落ち込む。何人もの子も見ていて、あまりに辛くて自分自身を傷つけたくなると言う子までいる。どうか差別をやめてほしい」 「クルド人が起こした事件のニュースにより、色々な偏見がネット上で言われて辛い。人権がない。(ビザがない状態で)学校を通うことに意味があるかなと感じることもある。差別されるだけの日々。助けてほしい」 子供たちは当然、日本語が読めるので、深く傷ついている。憶測だけや事実に基づかない内容もたくさんある。例えば、あるクルド人の少女が過去、学校でいじめを受けた何年も前のニュースを掘り起こして、“少女が壊したものを弁償しないから村八分にされている”など、事実に基づかない内容も書かれていた。それについて本人は強い憤りを感じている。 大人たちが事実無根の中傷で、子供たちの心に傷を負わせていることは、決して許されない、恥ずべき行為だ。 子供の父親は、「みんな普通の夢を持っているだけ」と語る。大きなことを望んでいるわけではないのに、なぜ子供たちの願いを叶えることができないのだろうか。
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何の罪もない子供たちに「国に帰れ!」と言えるか?
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おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)、入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)

ある日の入管~外国人収容施設は“生き地獄”~

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