エンタメ

『キングオブコント2023』採点徹底分析。カゲヤマとニッポンの社長が作った「天井」、サルゴリラがつかんだ“優勝という魚”

「1人だけ最低点」がついた組が多いのは

 もう少しファーストステージの話をしたい。今回、審査員全員がサルゴリラに最高得点をつけているのだが、最低点をつけた組は審査員ごとに異なるのだ。  採点表を見ると、ニッポンの社長は山内が、蛙亭は小峠が、ジグザグジギーは飯塚が1人だけ低い点(この日の最低点)をつけていることに気付く。この大混戦のなか、2点でも3点でも加われば大きく状況が変わっただろう。だが低い点をつけるのには、それなりの理由があるのだ。ジグザグジギーの点数について聞かれた飯塚はこう答えている。 「最初の真面目なマニフェストを大喜利風に出すところまではメチャクチャ面白かったんですけど、大喜利番組でよく聞くナレーターさんの声とか、笑点風のナレーションとかが、僕はちょっと『そんなわけないな』って思っちゃったので」  その一方、95点の高得点をつけたファイヤーサンダーには「モノマネ芸人という着眼点も相当面白かったし、記者会見場にモノマネをしている選手が現れてというところで、結構僕、引き込まれていたので。どうなるんだろうって」と称賛。「世界観に違和感なく入り込めるか」を重視しているのがよく分かる。  他の審査員にも、それぞれに重視しているポイントがあるだろう。だからこそ、審査員ごとに点数の傾向が異なるのだし、多様な評価軸を持って審査をする意味がある。そのことは今回の採点表からも読み取れるのだ。

3年連続で過去最高を更新した「合計点」と「平均点」

 いつにも増してインパクトのウェイトが高まった今大会だが、インパクト=派手な見た目や動きとは限らない。ファーストステージ9組目に登場し、最高得点を獲得したサルゴリラだけが、唯一2人ともほぼ座った状態でネタを続けていたことからも明らかだろう。  児玉演じるマジシャンは癖が強く、「中箱B」「冬の筑波山のカード」「パソコンケースB」「靴下ニンジン」と変な小道具もエスカレートしていく。そのインパクトに加えて評価されたのは、確かな演技力や構成力だ。 「マジックの本質のところも面白いんですけど、途中で出てくる『午前中に区役所行って……』とか『家に居場所がない』とか、あそこであいつ(マジシャン)の人間性が出るというか。それでよりバカバカしさに深みが増したというか」(小峠)
次のページ
3年連続で最高得点を更新
1
2
3
ライター。大手SIerにてシステムエンジニアとして勤務後、フリーランスのライターに。理系・エンジニア経験を強みに、企業取材やコーポレート案件など幅広く執筆するかたわら、「路線図マニア」としてメディアにも多数出演。著書に『たのしい路線図』(グラフィック社)、『日本の路線図』(三才ブックス)、『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか?』(ダイヤモンド社)など。X(Twitter):@inomsk

記事一覧へ
おすすめ記事