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月額2000円越えでも国内シェア2位の「U-NEXT」。他のサブスクと一線を画す戦略が勝因か

有線放送と動画配信だけではない

社名からは店舗向けBGM放送と動画配信サービスが主な事業のように見えますが、同社は他にも様々な事業を展開しています。2023年8月期における各事業の内容と売上高は次の通りです。 コンテンツ配信事業:動画配信サービス「U-NEXT」:852億円 店舗サービス事業:店舗向け音楽配信のほか、DX・システム、Wi-Fi整備事業など:634億円 通信事業:法人・個人向けのネット回線事業、MVNO事業:562億円 業務用システム事業:ホテル・病院向けの自動精算機など:205億円 エネルギー事業:店舗、法人向けの電力・ガス販売:549億円 祖業である有線放送は店舗サービス事業に含まれますが、現在では音楽配信だけでなく店舗のDX推進やWi-Fi整備などの事業も行っています。また近年見かけるようになった配膳ロボ事業も同事業に含まれます。業務用システム事業は2006年に子会社化したアルメックスが担っており、自動精算機などを提供しています。エネルギー事業は2016年の電力自由化を機に設立された事業で、現在では店舗や法人向けに電力およびガスの販売を行っているようです。以上のように事業は多岐にわたり、各事業もかなりの規模を有することがわかります。

“月額2000円越え”も国内シェア2位

それでは近年の業績について見ていきましょう。2019年8月期から2023年8月期までの業績は次の通りです。 【株式会社USEN-NEXT HOLDINGS 2019年8月期~2023年8月期】 売上高:1,758億円→1,932億円→2,084億円→2,379億円→2,763億円 営業利益:82.4億円→108.9億円→156.1億円→173.2億円→215.7億円 最終利益:60.7億円→49.1億円→80.4億円→86.9億円→109.6億円 売上高(コンテンツ配信事業):337億円→457億円→600億円→714億円→852億円 売上高(店舗サービス事業):※→※→561億円→582億円→634億円 売上高(通信事業):400億円→440億円→482億円→508億円→562億円 ※セグメント変更のため省略 以上のように近年は急成長を遂げていることがわかります。特に著しいのが動画配信サービス「U-NEXT」のコンテンツ配信事業です。動画配信サービスの利用者が増えて市場全体が伸びていることも一因ですが、コロナ禍では巣ごもり需要が追い風となりました。また、他の動画サービスと比較してコンテンツ数で勝る点でも消費者を惹きつけたと考えられます。 Netflixなど海外勢がクオリティの高い独自コンテンツの開発に注力するのに対し、U-NEXTは既存コンテンツの取扱数を増やす戦略をとっています。またジャンルも幅広く、他社が海外ドラマや映画、スポーツなどに特化する一方、U-NEXTでは日本人が好みやすい国内ドラマ・映画、韓流ものやアニメコンテンツも取り揃えてきました。 こうした戦略が功を奏したのかU-NEXTの月額使用料は2,189円と他社より高めなものの、金額ベースの国内シェアは12.6%と2位の規模をほこります。ちなみに1位はNetflix(22.3%)、3位はAmazon プライム・ビデオ(11.8%)、4位はDAZN(11.4%)です(出典:GEM Partners「動画配信(VOD)市場5年間予測(2023-2027年)レポート」)。
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各事業が好調を維持する理由は…
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経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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