能登半島地震で大量発生した「生き埋めSOS投稿」の謎。デマの拡散を防ぐには?
2024年は地震から始まった。能登半島で発生した震度7の地震は、日本の正月ムードを完全に吹き飛ばしてしまった。その翌日には羽田空港での航空機同士の衝突事故が発生し、我々は極めて目覚めの悪い新年を迎えてしまったが、その陰で、X(旧Twitter)では恐るべき現象が発生していた。謎の「コピペ投稿」である。
その内容は、生き埋めになっているから助けてくれというものだが、人々の善意を利用しながら、実は被災地に負担と混乱をもたらしてしまう可能性もあるこの投稿。なぜ、このようなポスト(旧ツイート)が現れるのか?
1月1日の能登半島での地震発生直後、こんなポストが拡散された。
「生き埋めになっています。助けてください。住所は○○の○○○です」
今回の災害では、倒壊した建物の下敷きになる人が相次いだ。その際にたまたまスマホが手元にあり、まさにワラをも掴む思いで「(自分もしくは家族が)生き埋めになっています」とポストした例は当然あったはずだ。こうした状況の人を責めてはいけない。
しかし、その投稿がインプレッション狙いのXユーザーに利用された事実も決して無視できない。岸田文雄首相は、このような呼びかけをしている。
<SNSの偽情報についてです。
実在しない住所や無関係の画像で救助を求めるような情報等、事実に基づかない不確実な情報がSNS上で拡散しています。
こうした悪質な虚偽情報は決して許されません。
国民の皆様には公共機関の情報を確認する等、虚偽情報に惑わされないよう政府としても呼びかけています。>
明らかに外国人と分かるユーザーが「生き埋めになっています。助けてください。住所は○○の○○○です」と、上記と全く同じ投稿をしてそれを拡散させる。もちろん、このユーザーは被災者というわけではないだろう。唯一の目的はインプレッション、即ち他のユーザーにその投稿が表示された回数を稼ぐことである。そのために「トレンドになっている投稿の内容をコピペする」ということも行われているのだ。
そもそも、Xのインプレッションを稼ぐことが何かしらの利益になるのか? その答えは、「利益になる」。
Xは現在2つの収益化プログラムを用意している。サブスクリプションと広告収益分配である。今回の話題は後者に関わることで、Xからの広告収益を得るには以下3つの条件をクリアする必要がある。
・プレミアムまたは認証済み組織にサブスクライブしている
・過去3ヶ月間のポストに対するインプレッションが500万件以上
・フォロワーが500人
「プレミアムまたは認証済み組織にサブスクライブしている」と「フォロワーが500人」は、実は決して難しい条件ではない。あまり積極的にXを利用しているわけではない筆者も、400人超のフォロワーを抱えているほどだ。問題は「過去3ヶ月間のポストに対するインプレッションが500万件以上」である。
仮に500万を単純に90日で割ると、1日あたり5万5,555である。1件のポストが数万単位のインプレッションを稼ぎ出すとするなら、それは多少でも「バズっている」状態だ。ごく普通の人の日常的な内容のポストに5万のインプレッションは、炎上でもしない限りまずあり得ない。
だからこそ、「バズった投稿をコピペする」という極めて単純な手法が横行しているのだ。
偽の「生き埋めSOS投稿」
Xの広告収益分配
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