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阪神淡路大震災で被災した酒蔵で26年熟成した日本酒の味わい

 日本酒事業を展開するスタートアップのClearが、26年熟成の日本酒「現外(GENGAI)」を500本限定で発売しました。今回、試飲することができたので、その様子をご紹介します。  今から25年以上前の1995年1月17日、阪神淡路大震災が起きました。その際、兵庫県の酒蔵・沢の鶴も大きな被害を受け、残っていたのは醸造途中の「酒母(しゅぼ)」のタンクだけでした。そのまま絞って清酒にしたのですが、味と香りのバランスがとれておらず、当時は商品化には至らなかったそう。そこで、一縷の望みをかけて熟成庫で眠らせることにしました。

眠っていたお酒が時を経て熟成酒「現外」へ

 時が経ち、2018年5月、沢の鶴から「飲んで欲しいお酒があるから来てほしい」とClearに連絡が入りました。
現外

阪神淡路大震災を生き残ったタンクには、製造途中の酒母が残っていました

 販売元のClearは2013年に創業。「日本酒の可能性に挑戦し、未知の市場を切り拓く」をミッションに掲げているたスタートアップです。代表取締役の生駒龍史氏は「めちゃくちゃ日本酒が好き」と笑います。味も歴史もビジネスポテンシャルもひっくるめて全部好きだそう。  Clearが手がける「SAKE HUNDRED(サケハンドレッド)」は、確固たるコンセプトの元、技術を持った酒蔵と共に製造しているオリジナルの日本酒ブランドです。楯の川酒造と作った「百光(びゃっこう)」、奥羽自慢と作った「思凛(しりん)」など、ラグジュアリーな日本酒をラインナップしています。
SAKE HUNDRED

ラグジュアリーな日本酒「SAKE HUNDRED」の面々です

 沢の鶴に呼ばれた生駒氏は、「数種類熟成酒があるので、まずは飲んでください」と言われたそうです。なかには、50年熟成ものもあったのですが、芳醇さと透明感が圧倒的だったのが、23年の熟成を経たお酒でした。 「当時、蔵は倒壊して売上げが激減しているなか、酒母から絞って作ったお酒は美味しくなかったんです。本来、調整されるべきだった甘みや苦味、酸味、旨みが野生のまま残っていました。それを廃棄せずに育ててみますか、と熟成庫に入れたらしいのです。このお酒ができたのは、人の意思の力だと思います」(生駒氏)  そして生まれたのが「現外」です。まず、2020年1月に25年熟成酒「現外2020」として限定200本が販売されました。このときの価格は16万5000円です。1本ずつにシリアルナンバーを付け、品質保証のギャランティカードも付属しています。  さらに1年が経過し、26年熟成として新たにボトリングして「現外」としてリリースされました。価格も改訂され、19万8000円です。

26年経った日本酒は透明じゃない!?

現外

26年熟成を経た「現外」

 今回、特別に「現外」をテイスティングさせていただきました。透明な日本酒をイメージしていると驚くほどアンバーな色合い。芳醇な香りで、熟成感が伝わってきます。  筆者は、これまでも日本酒の熟成酒はいろいろと飲んでおり、40年熟成ものも飲んだことがあります。それらと比べても印象の強い香りです。甘やかで少しスパイシーです。  口当たりはとてもスームスで滑らか。ワインとはまったく異なる印象で、確かにいつも飲んでいる日本酒の延長上に存在していることがわかります。  豊かな甘みと酸味、苦味が混在し、アンバランスなバランスを取っていて、ひと言でいうと「顔がにやけるくらい美味しい」。醸造酒だけあり、旨みもたっぷりで飲み応えがあります。フィニッシュも長く、フワーっと「現外」の香りが漂います。  誕生までのお話を聞いた後だったので、歴史を感じじんわりと味わいました。味見のはずが普通に1杯いただいてしまい、至福です。  Clearのウェブサイトではペアリングが紹介されていましたが、筆者としてはこんな極上の酒は、食後にまったりと飲むのがいいと思います。
現外

「現外」をテイスティングさせていただきました

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筆者の好みは「現外」よりも……
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