多くのDVシェルターは都道府県や自治体からの委託事業
「区のDV相談窓口が、逃げるときは子も連れてきなさいと指示したケースもあります」
そういったシェルターは、自治体や都道府県から委託されたNPO法人等が運営していることが多い。夫側が都道府県や自治体を訴えるケースもある。妻は子の連れ去りに関して、DV相談窓口からの指示があったと証言したが、区は否定した。
そして、シェルターもまた、行政からの補助金を得ながら運営されている。母子でシェルターに入所すると、一人一泊大人数千円程度、子どもはその半額程度の補助金がシェルター運営者に支払われるという。
「元々、シェルターは公が持っている施設で運営するという話でした。そこに民間の施設も参入できるようになりました。要するに、
お金になる構図が出来上がっているんですよ。そこに利権があるとは言い切れませんが、そう勘ぐってしまいます」
岩本氏の依頼人は8割が夫だ。
「弁護士の立場からすると妻側の弁護をした方が儲かります。自分の依頼人である妻側が子を引き取ることによって、婚姻費用、養育費まで、全部入ってくるじゃないですか。成功報酬は高い弁護士事務所で、
18~20%です。養育費が月10万円だとすれば、成功報酬が20%ならば、2万円もらえるでしょう。
1年間で24万円ですよね。
10年間で240万円でしょう。特に養育費は子が成人するまで支払われます。その1件だけじゃないわけですから儲かりますよね」
仮にDVと認定されれば、妻側は慰謝料まで取れることになる。夫側につく弁護士が少なく見えるのには、そういう弁護士の金銭面のメリットがありそうだ。面会交流をしないことに成功した場合の成功報酬を取る事務所もある。弁護士費用は事務所のホームページを見れば分かるが、子どもと片親を会わせないことで報酬を取るのは、親子を引き裂く行為にしか見えない。
「夫側の弁護をするときは、支払う側なので、報酬の請求をするのさえ申し訳ない気持ちになります。
基本的には妻側につくよりも部が悪いですよね」
冤罪をかけられた夫たちの中には自殺を考える人も多い。
「全てを持っていかれる感じがする人が多いんじゃないかと思います。仕事を辞めたいっていう人はいっぱいいます。だって、子どものために、仕事を頑張れてきたのに、子どもには会えないわ、税金は取られるわ。‟
何のために、俺、生きているの”ってなっちゃうでしょう。そうするとみんな希死念慮が生まれちゃうんです。
実際に自殺した人もいるし、自殺未遂を図った人もいますよ」
養育費の未払いが問題になる中、養育費を支払い続け、自殺まで考える男性は、責任感が強い性格に違いない。全てを奪われれば死を考えてもおかしくない。
「冒頭の問題意識に戻れば、共同親権の法制化も大切でだが、
DV冤罪で子を失う親(親を失う子)をなくすことと、真のDV被害者を保護していくことを両立させる制度設計が必要です。前者が全く見落とされている、現在のいわゆる
DV防止法の見直しも急務だと思う」
現状の単独親権にも問題があるが、共同親権を採用している国でも課題がある。だが、今の、親子関係を引き裂くような仕組みの一番の犠牲者は子どもだ。どちらがいいのかは慎重に議論していかなければならない問題だろう。今国会でどんな結論が出るのか見守りたい。
<取材・文/田口ゆう>
立教大学卒経済学部経営学科卒。「
あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):
@Thepowerofdive1