ニュース

東京・立石「呑んべ横丁」が消滅…再開発賛成派と反対派が争う“立石らしさ”のズレ

「立石が再開発で生まれ変わるチャンス」

[せんべろ街が消える]の大問題

南口で「ほそや靴店」を営む細谷氏(中央)。イベントの企画は、地元仲間で構成した“チーム立石”で考えている

 その一方で、再開発事業に前向きな考えの人もいる。立石商店連合会の副会長・細谷政男氏は、理由をこう話す。 「立石はせんべろの街とか、昭和レトロな下町と言われるけど、住んでる側からすれば街がきれいで安全になるのはいいこと。旧態依然として取り残された立石が再開発で生まれ変わるチャンスなんです」  細谷氏は北口の解体前にも、「北口に捧げるフォーエバー2023」というイベントを開催。多くの人で賑わった。 「これまでの感謝と、立石の魅力を幅広い世代に忘れられないようにしたかったんです。イベント主催のメンバーたちは、立石が好きという思いで動いている。継承しないといけない部分もあるけど『立石らしさを残すこと』にこだわりすぎるのは違うかなと思う」

守りたい“立石らしさ”とは

 ’28年には、北口に葛飾区役所や商業施設が入るビルが完成予定だ。それでも、塔嶌氏は諦めたくないという。 「世間では“せんべろの聖地”としてのイメージが強いですが、立石に住む人間にとっては、それ以外にも守りたい“立石らしさ”がある。その軸もないまま手当たり次第に街が変わっていくのは怖い。そうなる前に、立ち止まって考えるひとつのきっかけになるような活動を続けていきたいです」  細谷氏にも「立石らしさとは何か?」と尋ねてみた。 「立石に愛着を持って住んでいること。呑んべ横丁がなくなって騒いでるのは外の人ですよ。再開発に賛成でも反対でも、それぞれが立石に対する思いや愛を考えながらつくっていくものだと思います」  せんべろ街が消えたとしても、そこに住む人たちの生活は変わらずに続いていくのだ。 取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/杉原洋平 図版/松崎芳則(ミューズグラフィック)
1
2
おすすめ記事