更新日:2024年08月02日 12:48
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“あえて”京大進学を選んだ芸人が学生生活に絶望した出来事。「同級生が京大以外の大学のことを…」

「京大以外の大学のことをばかにする」同級生たちに驚き

――九月さんは大学院の頃に芸人活動を始められましたが、それ以前の学部在学時代はどのような学生だったのでしょうか? 九月:入学してすぐは周りの空気になじめず、1年生のときは2~3単位くらいしか取れませんでした。最終的に大学に行かなくなってしまいました。というのも、大学の雰囲気が「自由の学風」から想像されるものとは程遠く感じられたんです。ずっと偏差値ランキングみたいなヒエラルキーがそばにある感じというのでしょうか。大学生というより、進学校の4〜5年生をやってる感じがしてしまったんです。 出身校をわかりやすく表すなら、僕の出身校は“進学校弱”くらいだったのですが、周囲のほとんどは“進学校強”出身者ばかりで。彼らは京大以外の大学のことをめちゃくちゃばかにしていたのですが、それにすごくびっくりしてしまって。住んでいる世界や育ってきた環境がそもそも違うな、と思ったのも大学生活に絶望した理由のひとつです。 ――怖いですね(笑)。 九月:怖いですよね(笑)。「京大なんて受かって当たり前」「国立大以外に行くヤツは馬鹿か不良か不登校」とか平気で発言するんですよ。そのため、彼らと持っている感覚や常識のラインが全然違うなと感じてしまい、雰囲気についていけずに居場所がないように感じてしまいました。

京大は「妖怪」と出会って成長できる環境

――その後はどのように大学に復帰されたのでしょうか。 九月:大学3年の頃には「勉強自体はしよう」といったモードに切り替わり、大学の講義やゼミに対して、熱心の取り組むようになりました。その頃には、入学時に選民思想的な怖さを持っていた人たちも、いくぶんマイルドな価値観に着地していました。彼らは「小さい頃からさまざまなものを犠牲にして京大まで来ているので、ある種周りを見下してもいい」といった自負の持ち方をしてしまっていたのではないか、と思いました。 僕はそのような幼少期や学生時代を送ってきたわけではなかったので、彼らの感覚に追いつけませんでした。ですが、彼らは大学生活を送るうえで非関西圏からきた学生や留学生、アルバイト先の先輩などの“異文化”に触れるわけです。そこで何かしらの抱いていた境界を越えて、自分が存在する範囲が広がる経験を経てマイルドに着地をするのだと思います。 ――九月さんも誰かにとっての境界的・異文化的な存在だったかもしれませんね。 九月:そうですね。僕自身が青森を出て京大に行ったことも越境でしたが、誰かが僕と関わることについてもその人自身の越境だった可能性はありますね。僕は、京大に入学した一番の理由が「妖怪になりたい」ということだったのですが、やはりいろんな“妖怪的存在”と触れ合って世界を広げられることも、京大の魅力のひとつなのかもしれません。
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九月さんが出会った「京大に出没する妖怪」
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ライター・インタビュアー。1993年生まれ。大学卒業後に大手印刷会社、出版社勤務を経てフリーライターに。ビジネス系の取材記事とルポをメインに執筆。
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