“あえて”京大進学を選んだ芸人が学生生活に絶望した出来事。「同級生が京大以外の大学のことを…」
日本を代表する大学のひとつ、京都大学。「自由の学風」を重んじるこの大学には、日本中から優秀な学生が集まると同時に「変人」と呼ばれる人も数多く存在する。九月さん(@kugatsu_main)は、京都大学教育学部卒業後にお笑い芸人になったという稀有な経歴の持ち主であり、変人の1人と言えるだろう。
事務所無所属のピン芸人として、一人芝居風のコントを中心に活動中。劇場、アートギャラリー、バー、民家、廃墟、山、海など、場所を選ばないコントライブが特徴だ。そして、2023年に初のエッセイ『走る道化、浮かぶ日常』(祥伝社)を出版。多岐にわたる活動を行っている。
今回は、“妖怪になること”を目指して京大に入学したという九月さんに、京大が「変人が多い大学」と言われている理由や、実際に存在した変人たち、そして自身が目指している「妖怪像」についてお話を聞いた。
――青森県出身の九月さんが京都大学に進学したのは、どのような理由だったのでしょうか?
九月:青森県の優秀な学生が進路選択するときは、東北大学や国立大学の医学部が念頭に浮かびます。地元に残って就職するのであればこのどちらかで完結するので、これが王道ルートなのです。ですので、東大や京大を目指す人はちょっと物好きな人になっちゃうんですよ。そんな物好きもほぼすべてが東大に行くのですが、僕はもう1回ひねって京大を選択しました。
――なぜ、あえて京大を選ばれたのでしょうか?
九月:京大の文化圏が故郷と離れていることが大きな理由でした。青森を出るまでは関西の文化に縁がなかったので、知らないものにあふれている場所に行ってみたかったのです。そして、京大は自由を重んじる学風が特徴だったので、「立身出世したい」といった“王道の道”を外れた存在に出会えるという期待を抱いていました。ですが、実際に進学してみたらそんなことはなく……。
僕にとっては裏の裏をかいた選択でしたけど、関西圏出身者が京大へ進学するのは、勉強ができる優秀な人による立身出世のための最も効率的かつ合理的な選択なのです。ですので、実際に僕の思っていたような人たちであふれているわけではありませんでした。
――京大は「変人が多い」とよく言われますが、そうではなかったということでしょうか?
九月:変人が多いと言われて集まってくるのは、実は変人じゃなくて“変人が好きなやつ”なんです。そして変人を祭り上げたい立身出世型の優等生が集まってきて、そこに裏の裏をかいてきたわれわれのような“妙なヤツ”が加わって、やっとそこでピースが揃うんです。僕のような非関西地域から京大に行った人間は進路選択で既に裏をかいているので、その時点で変人候補なのです。
そして、変人の素養のある人間を関西圏の優等生たちが発見していくのです。なので、京大のいい点は逸脱に対して寛容というところですね。誰かが不思議なことやよくわからないことをしたときに「直せ、正せ」と言う人はいないですね。ある程度お互いを野放しにし合う、程よい無関心と不干渉が貫かれているので、徹底的な個人主義な社会が形成されています。
あえて京大進学を選んだ理由は…
九月さんが見た「変人」のリアル
ライター・インタビュアー。1993年生まれ。大学卒業後に大手印刷会社、出版社勤務を経てフリーライターに。ビジネス系の取材記事とルポをメインに執筆。
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