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「22時閉店、カラオケなし、禁煙」のスナックに人が集まるワケ。客の3分の1は“お酒が飲めない”

 人もまばらでほの暗い路地裏に、ひときわ鈍く光る看板がある。店内は見えなくとも扉の向こうで誰かが熱唱しているのがわかる。  そんな“夜の社交場”スナックが、コロナ禍で急減したかと思いきや、今、世代を拡大して賑わいを取り戻している。現場を訪ねてみた。

多店舗展開でイメージ改革

復活![スナック快進撃]の現場

【たなかるいさん】イナック代表。ジーンズメイト、リクルート、カカクコムなどを経て独立。小台で街中スナックの前身となる「生活茶屋」を営む

 全国に3店舗を展開する「街中スナック」は、スナックの定義をひっくり返そうとしている。禁煙、カラオケなし、22時には閉店。色を売りにしない。そして客の3分の1はお酒が飲めないという。  これでスナックと呼んでいいのか不思議だが、「街中スナック」を手がけるイナック代表のたなかるいさんは「スナックの本質は居場所」と話す。 「カラオケが苦手という人も一定数いるのではないでしょうか? 知らない世代の曲をずっと聴いているのは辛いものです。歌っているとなかなか会話もしづらい。  世代を超えて会話を楽しむにはどうしたらいいのかを考えた結果、この形になりました」

隣の人と乾杯すると100円引き。会話が弾む仕組み

復活![スナック快進撃]の現場

ボトルに書かれたテーマに合えば、1杯無料で飲めるシェアボトル。お礼のメッセージを書くのが条件

 東京さくらトラムの小台駅(荒川区)のそばにある「街中スナック ARAKAWA LABO本店」。開店と同時に客が訪れ、自然と会話が生まれていた。 「隣の人と乾杯すると100円引きになる『乾杯ドリンク』制や、ボトルに『今日がんばった人』『長渕剛のファン』など書かれているテーマに合えば、他のお客さんが入れたボトルを飲める『シェアボトル』制など、会話が弾むような仕組みを取り入れています」  シェアボトルには、お礼のメッセージを書くのが条件になっているとのこと。  近所に住む台湾出身の20代男性は「地元の人と交流できて輪が広がる」と笑顔だった。
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意外にも良かった「スナックとまちづくりの相性」
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