更新日:2024年05月05日 09:53
お金

物価高でも値上げをしない「サイゼリヤ」。コスパ最強であり続ける“50年前から変わらぬ”姿勢とは

少人数でも対応できる仕組みの確立

サイゼリヤ

サイゼリヤのメニュー②

 来客数が1日平均400人、客単価795円のサイゼリヤ。ランチもディナーも、キッチン・ホール合わせて5~6人が配置され、ピークの波はホールからキッチンに流れるから、その都度、ホールからキッチンに応援に行くなど、スクランブル体制で対応している。繁忙時の週末はそれぞれ1人追加されるようだ。  それらは各自に合理的な分業がされ、作業手順や作業動線などで高い効率性が仕組み化されているから、最小限の人数で無理なく客を捌けるのである。キッチンとホールの人数比率はセントラルキッチンを有するチェーン店と同様にキッチン45%・ホール55%の割合になっている。  飲食店は人の良し悪しで業績の差が出るもの。サイゼリヤは仕組みや作業手順が明確だから、誰でも新人に教育できるし、新人も覚えやすいから、即戦力化に時間を要さないのが特徴でもある。アルバイトがなかなか定着せず、入れ替わりが激しい中で、新人に教えるわずらわしさが付きまとうが、その解消策にもなる。アルバイト中心の体制だが、みんなやりがいを持ってイキイキと働いている。学生さんにとって、まかないがメニューの半額で食べられるというのも魅力のようだ。  また、店舗間でスタッフを融通する際も、どの店にヘルプで行っても同じ作業と店内レイアウトだから、容易に作業ができるのはチェーンのメリットであろう。

飲食DXを進めるチェーン店が多いなかで…

 最近のファミレスでお客さんの注文は、タブレット端末などデジタル化が当然になっているが、サイゼリヤは紙による注文方式(客がメニュー番号を記入)にしている。  これは、注文時間の短縮化・オーダーミスの防止などで業務の効率化に貢献しているからである。従業員がお客さんから直接、注文をうかがう時のやり取りに要する時間はけっこうかかるし、従業員の聞き間違いやお客さんの言い間違いから発生する無駄やトラブルはなくしたほうがいいから、紙注文を採用しているようだ。  付加価値額を高く頂戴する飲食店にとって、顧客との最低限の接客は必要であり、最後の接客機会である会計もセルフではなく人での対応である(昨年末より一部店舗でスマホによるオーダー方式を導入)。
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アプリもクーポンもなしにしている理由
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飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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