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スタバと一線を画す「ルノアール」。“特異なビジネスモデル”を確立も、業績が悪化するワケ

他と一線を画す「フルサービス」と「喫煙席」

スタバやドトール、タリーズなど、セルフ方式のカフェが台頭するなか、喫茶室ルノアールはフルサービスの喫茶店として存在感を示してきました。店内の内装も昔ながらのレトロな喫茶店スタイルです。「大正ロマン」をコンセプトにしていますが。 2016年から「昭和モダン」の店舗も表れ、現時点でそれぞれ45/32店舗を展開しています。看板メニューの「ルノアールブレンド」は1杯700円台(店舗によって異なる)で、コーヒーの他、紅茶やミルク、ソフトドリンクも取り揃えています。古い喫茶店らしく、トーストやケーキメニューが充実しているのも特徴です。 喫茶室ルノアールはタバコが吸える喫茶店として愛煙家に愛されてきました。公式サイトによると禁煙席と加熱式たばこが吸える喫煙席の「分煙」タイプは75店舗、紙たばこ専用の「喫煙ブース」を構える店舗は56店舗あるようです。フルサービスかつ喫煙可というように、「喫茶室ルノアール」は近年では珍しいタイプの喫茶店と言えます。 ちなみに会社全体では「受取補償金」も収益源としています。受取補償金はビルオーナーからの立退料の事で、コロナ前の数年間は税金等調整前当期純利益に対して受取補償金がおよそ三割を占めていました。継続して利益を確保していることから、出店の際は立退料の事も考慮しているのでしょう。

「店舗の立地」が原因で大きく苦戦することに

コロナ禍では都内の駅前・繁華街という立地が業績悪化につながりました。20年3月期から24年3月期における会社全体の業績は次の通りです。 【株式会社銀座ルノアール(20年3月期~24年3月期)】 売上高:80.5億円→41.7億円→45.6億円→61.2億円→73.5億円 営業利益:4.1億円→▲19.6億円→▲12.4億円→▲4.1億円→1,500万円 最終利益:0.5億円→▲23.7億円→3.5億円→▲2.9億円→5,900万円 店舗数:117店→102店→101店→102店→100店 休業や時短営業の他、もともとビジネス利用が多かったこともあり、都心という店舗立地が業績悪化に拍車をかけた形です。22年3月期こそ助成金や店舗ビル売却による固定資産売却益(5.8億円)で最終益は黒字を維持しましたが、前年度の赤字は甚大で、自己資本比率は80%台から50%台へと大幅に減少しました。不景気下で立ち退きの要請も減り、前記の受取補償金についても23年3月期はゼロ、24年3月期は4,700万円とコロナ禍以前と比較してかなり減少しています。
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「女性客」をターゲットにした店舗が続々登場
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経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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