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薬物依存で虐待サバイバーの女性32歳が語る“薬なしでは生きられなかった”ワケ「依存的に使う人の背景にあるもの」

子どもを妊娠したことがきっかけで立ち直る

 壮絶な半生を歩んだが、23歳の時に子どもを授かる。子どもを妊娠したことをきっかけに入籍もした。 「自殺を図ってから子どもを授かったとわかる直前まで、薬物はやめていたものの、タバコとお酒はやめていなかったんです。だけど、産婦人科の帰り道に、ポケットのタバコを握りつぶしてテーブルに叩きつけました。そうしたら、自分の性格上、もう引っ込みがつかなくなるかなと思って」  長男を出産後、年子で次男を出産し、2人とも母乳で育てた。その間、たばこや酒・薬物は一切使用しなかった。子どもの送迎に車を使うことが増えたので、父のように飲酒運転で事故を起こしたくなかったこともあった。しかし数年後、離婚し、シングルマザーに。次男の授乳が終わり、飲酒と喫煙を再開したが、ある日、長男に言われた言葉で治療したいと思うようになる。 「長男に、『お酒を飲んでいるママがホントに嫌い』と言われました。自分が子どもの頃、周りの大人たちに意見を取り入れてもらったことがなかったので、息子に同じ思いはさせちゃいけないと思いました。だけど、1人でやめる自信がなかったので、初めて自分から必要だと思い、依存症専門外来を受診することにしたんです」  そこで出会った精神科医の松本俊彦氏や、風間氏が所属しているNPO法人ASK代表の今成知美氏をはじめ、信頼できる仲間たちに出会えたことで、薬物や酒を使わずとも自己効力感が得られるようになっていった。2023年5月には『専門家と回復者に聞く 学校で教えてくれない本当の依存症』も出版している。

「木津川ダルク」の実名報道に思うこと

依存症cover

風間氏の著書『専門家と回復者に聞く 学校で教えてくれない本当の依存症』(監修・松本俊彦、田中紀子、合同出版)

 死んでしまいたいと思うほどの状態から抜け出した風間氏。2021年からはNPO法人 ASKの社会対策部に所属している。元当事者として昨今の薬物報道に強い失望を感じることがあるという。 「実名報道は必要だったのでしょうか。薬物を依存的に使う人の背景には、逆境的小児期体験や、胸の痛み、孤立感などがあります。たしかに、違法薬物を使うことは犯罪です。だけど、使った人たちは、その法という一線を超えてまで使ったほうがいいと思うほど苦しい状態だった、ともいえます。  ダルクに入所している人たちの多くは、仲間と一緒に薬物を使わない人生を歩もうと立ち上がった人たちです。私はダルクに入所したことはありませんが、ダルクのおかげで立ち直れたと話す仲間たちに、多様な立ち直りの選択肢と希望を見せてもらえて、いつも勇気づけられています。だから、彼らがまるで極悪非道な犯罪者かのように報道されるのは私自身とても辛く、苦しいです。そして私もまた薬物依存症の当事者なので、そうした報道と痛みに突き動かされ、薬物を使用したい気持ちが顔を出します」
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何をしてもいいと考える差別意識がある
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立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1

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