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「お風呂の中でスピーチを練習」逆境を乗り越えた偉人たちの勉強法とは?

どうしてこうもうまくいかないのか——。仕事においても私生活においても、思いどおりにいかずに悔しい思いをすることがあるだろう。しかし、そんなときこそ、前に進むチャンスかもしれない。名立たる偉人たちはヤバいときにこそ、それを学びに変えて、飛躍のチャンスにつなげている。 拙著『ヤバすぎる!偉人の勉強やり方図鑑』から、逆境からチャンスをつかんだ偉人たちを紹介する。落ち込んだときは、ぜひ参考にしてみてほしい。

実はスピーチが苦手だったチャーチル

チャーチル

(C)しまだなな 『ヤバすぎる!偉人の勉強やり方図鑑』より

イギリスの名宰相チャーチルは、演説に多くの技巧を用いて国民を盛り上げ、第二次世界大戦で強烈なリーダーシップを発揮したことで知られています。 ドイツのソ連侵攻後の下院演説では、「絶対に、絶対に、絶対にあきらめるな」と、力強いメッセージをストレートに伝えました。また、冷戦時代のヨーロッパにおける東西両陣営の緊張状態を、「鉄のカーテン」と巧みにたとえて、世界的に注目を集めることになりました。 スピーチでチャーチルが重視したのは「言葉がどう響くか」ということ。チャーチルの演説で、名スピーチと呼ばれるものの多くは、言葉のリズムを重視した、リフレイン(反復)を多用したものです。 例えば、大戦中、ナチスからの撤退作戦を完了させるときは「我々は、海岸で戦う。敵の上陸地点で戦う。野戦や市街で戦う。丘陵で戦う。我々は、断じて降伏しない」と、文と文と間の接続詞を省略。言葉にリズムをつけることで、撤退に安心する国民の気を引き締め、さらなる戦いへと目を向けさせています。 しかし、そんなチャーチルは、最初から話がうまかったわけではありません。あるときは、みなの前に話している途中に、言葉につまってしまい、3分間も沈黙。両手で頭を覆うと「ご清聴、感謝します」とだけ言って、そのままスピーチを終了してしまったことがありました。 その失敗以来、チャーチルは、スピーチの内容を頭に叩き込むようになりました。完成原稿を常に持ち歩き、お風呂の中でも練習していたそうです。 苦手なことはつい逃げがちですが、改善点は明白なわけですから、取り組み方によっては、伸び代が一番あるところのはず。チャーチルは、苦手だからこそ上達できるように努力し、弱点をむしろ長所に変えてしまったのでした。 【こぼれ話】 「最も偉大なイギリス人」ともいわれるチャーチルですが、学生時代は劣等生そのもの。政治家の父は、息子の学校成績を見て、後を継がせるのをあきらめたくらいです。 そんなチャーチルが夢中になったのが、おもちゃの兵隊遊び。1500体もの兵隊人形をコレクションしていました。 父が「軍人になりたいか?」と問いかけると、チャーチルは「なりたいです」と回答。陸軍士官学校に進学することになりました。チャーチルはこう振り返っています。 「おもちゃの兵隊が私の将来を決めた」 息子がこんなに出世するとは、お父さんも驚いたことでしょう。 【名言】 「成功とは、失敗を重ねても、やる気を失わないでいられる才能である」

生死をさまよう重傷を負ったことで画家の道へ(フリーダ・カーロ)

フリーダ

(C)しまだなな 『ヤバすぎる!偉人の勉強やり方図鑑』より

人生のどん底でも、学ぼうとした女性がいます。メキシコの画家フリーダ・カーロです。6歳でポリオを発症したフリーダは、9カ月もの間、病院の外に出ることができず、後遺症も残りました。 それでも勉強が得意だったため、フリーダはメキシコ市屈指のエリート校である国立予科高等学校に入学。学校では刺激的な仲間に囲まれて、フリーダの目も外に向けられたようです。「とうとう足のことを忘れてしまった」というほど、充実した学生生活を送っています。 ところが、そんな矢先にフリーダは悲劇に見舞われることになります。フリーダの乗るバスが、路面電車と正面衝突してしまったのです。フリーダは何カ所も骨折するという大けがを負いました。それは、お医者さんが「もう生きられないかもしれない」と考えるほどの重傷でした。 「呼吸が苦しく、肺と背中全体が痛みます。足を動かすことも歩くこともできません」 そう嘆くフリーダのために、母は病院のベッドを改造。ベッドに横たわると、上の鏡で自分の姿が観られるようにしました。 「こんなときに自分の姿なんて見たくないよ……」 最初は、そう戸惑ったフリーダでしたが、寝転がって自分の顔を見つめているうちに「絵を描きたい!」という思いがむくむくと湧いてきました。父に絵の具を買ってきてもらうと、フリーダは自分の顔、つまり、自画像を描き始めます。そして、自分の自画像が出来上がると、今度は家族の顔を描き始めました。 食べるのも忘れて描き続けたフリーダ。まさか、自分が画家になるとは、想像していなかったことでしょう。 フリーダは絵を描くことで、ただ痛みに苦しむことだけの日々から、抜け出そうとしたのかもしれません。何かを学び、身につけることは、私たちにいつも「生きがい」を与えてくれるのです。 【こぼれ話】 生死をさまようほどの事故の後、フリーダは22才のときに、44才のディエゴ・リベラと結婚します。フリーダがディエゴに絵のアドバイスをもらったのが、出会いのきっかけといわれています。リベラは「尋常でない表現のエネルギーを感じた」とフリーダの作品を評価し、フリーダもまたディエゴを尊敬していました。 ただ、お互いに強烈な個性があるがゆえに、結婚生活は波乱に満ちたものでした。一度は別れを選んでいますが、再び結婚しています。互いに運命の相手だったのでしょうね。 【名言】 「たったひとつ、よいことがあります。それは苦痛になれ始めたことです」
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伝記作家、偉人研究家、名言収集家。1979年兵庫県生まれ。同志社大学卒。業界誌編集長を経て、2020年に独立して執筆業に専念。『偉人名言迷言事典』『逃げまくった文豪たち』『10分で世界が広がる 15人の偉人のおはなし』『賢者に学ぶ、「心が折れない」生き方』など著作多数。『ざんねんな偉人伝』『ざんねんな歴史人物』は累計20万部を突破し、ベストセラーとなっている。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義、宮崎大学公開講座などで講師活動も行う。最新刊は『「神回答」大全 人生のピンチを乗り切る著名人の最強アンサー100』。

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