多忙すぎる仕事を急に放り投げて失踪しても“成功する人”は意外と多い
この寒い冬をすぎれば、また暖かな春がやってくる。しかし、「いや、もうずっと心は冬のままだし……」と欝々とした人もいることだろう。そんなときは思い切って、今の状況を大胆に変えてみたほうがよいかもしれない。
もちろん、仕事にしろ、プライベートにしろ、今やっていることを放りだすのは簡単なことではない。「無責任だ!」というそしりを受けることもあるだろう。
逃げまくった文豪たち』から、逃げの達人である文豪たちの生き様を紹介する。ぜひ心に刻んでおいてほしい。
よくぞ逃げたくならなかったものだ。思わずそう感心してしまう。ドイツの文豪ゲーテが、幼少期に父から施された英才教育のことである。
ゲーテは教育パパの手配によって、ギリシア語、ラテン語、フランス語、イタリア語、英語、ヘブライ語など語学を叩きこまれた。
さらに、乗馬やダンス、ピアノまで仕込まれたというから、「習い事が多すぎる」といわれる日本の現代っ子も裸足で逃げ出すレベルである。
それでも、ゲーテは逃げることなく父の期待に応え続けた。
ライプツィヒ大学とシュトラスブルク大学で法学を学び、ヴェッツラーの帝国法院で研修を受ける……父とまったく同じ歩みだ。ゲーテにとって、それだけ影響が大きかったのだろう。
ところが、ゲーテはある1冊の本を書き上げることで、父とはまるで違う道を歩むことになる。その本こそが、ゲーテが25歳のときに書いた『若きウェルテルの悩み』だ。
1774年にこの小説が出版されると、どの家の窓も遅くまで明かりがついていたという。それだけみんなが夢中になって読んだということである。
『若きウェルテルの悩み』は、英語、フランス語、イタリア語などに訳され、ヨーロッパ全土に広まっていった。ナポレオンが9回も読んだという逸話もあるくらいだ。
ゲーテ自身が、小説の主人公ウェルテルのモデルとされたことも盛り上がった理由のひとつ。ゲーテは大学を卒業して研修を受けにヴェッツラーに来たときに、ヒロインのモデルとなったシャルロッテと出会っている。
しかし、シャルロッテには婚約者がいたことから、ゲーテは失恋。その体験を小説にしたところ、ベストセラーになったわけである。
ただ、ゲーテが青年期に心を奪われたのは、シャルロッテひとりではない。ゲーテは恋多き男で、次から次へと恋に落ちた。共通しているのが、関係がいよいよ差し迫ってくると、逃亡していることだ。
あるミラノの女性は、すでに決まっている婚約を解消してまでゲーテからのプロポーズを待ったが、ゲーテはいきなり姿を消したという。逃げ足が速い男である。
ゲーテと比較的長続きしたのは、シュタイン夫人だ。ゲーテは人妻であるシュタイン夫人の虜になると、多くの詩や手紙を書いて親密な関係になった。シュタイン夫人には、夫との間に7人もの子どもがいたので、それがかえってよかったのかもしれない。
「結婚」の2文字が出そうになると、脱兎のごとく逃走したゲーテ。57歳になって、工場で働くクリスティアーネと結婚するが、19年もの同棲生活を経たうえでの決断だった。
だが、自分の人生はほかの誰でもない、あなたのもの。ついつい抱え込みがちな私たちは、「しんどいときは逃げてもいいよ」と、自分にいつも言い聞かせるくらいで、ちょうどよいのだ。そこで拙著『絶望的なスケジュールをこなした天才ゲーテ
恋人が真剣になるとすぐに逃げたゲーテ
1
2
伝記作家、偉人研究家、名言収集家。1979年兵庫県生まれ。同志社大学卒。業界誌編集長を経て、2020年に独立して執筆業に専念。『偉人名言迷言事典』『逃げまくった文豪たち』『10分で世界が広がる 15人の偉人のおはなし』『賢者に学ぶ、「心が折れない」生き方』など著作多数。『ざんねんな偉人伝』『ざんねんな歴史人物』は累計20万部を突破し、ベストセラーとなっている。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義、宮崎大学公開講座などで講師活動も行う。最新刊は『「神回答」大全 人生のピンチを乗り切る著名人の最強アンサー100』。
記事一覧へ
記事一覧へ
『逃げまくった文豪たち』 あの偉大な文豪も、逃げまくっていた!? 知れば知るほど勇気をもらえる文豪の逃げエピソード集! 誰もが知る文豪たちも、実は仕事や勉強、家族や借金取りから逃げた「逃げエピソード」を持っている。厳しすぎる学校から逃亡したり、禁断の恋に手を出して海外逃亡したり……。しかし、その逃げた先で歴史に残る名作を生み出している。 |
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ