仕事

渋沢栄一に学ぶ、相手を説得するテクニック。「いや」「でも」と否定しない

今こそ「資本主義の父」に学びたい

渋沢栄一

千代田区大手町の常盤橋公園にある渋沢栄一像(Photo by Adobe Stock)

 激動の明治時代の幕開けとともに、獅子奮迅の活躍をした実業家の渋沢栄一。  大蔵省を辞めて事業家に転身すると、日本初の銀行として第一国立銀行を設立した。その後、証券や保険といった金融にとどまらず、鉄道、海運、通信、製紙、紡績とあらゆる分野での事業の立ち上げに携わった。人呼んで「資本主義の父」。渋沢を主役としたNHK大河ドラマ第60作「青天を衝け」が好調なのも、それだけ渋沢栄一という人物が今、時代に求められているからだろう。  先の見えない不景気に新型コロナウイルス感染症の拡大という、未曽有の事態に見舞われている今。激動の時代を生き抜くために、渋沢から学べることは多い。そのうちの一つが、相手の心を動かす渋沢の「説得テクニック」である。

相手の言い分をきちんと受け止める

 会社の仕事では、上司や取引先、顧客など誰かを説得しなければならないという場面が多くある。だが、つい熱意が先走って自分の主張を強弁してしまったり、逆に、傾聴が重要だと相手の意見ばかりを聞いてしまったりして、説得に失敗するケースも少なくないだろう。  農家に生まれた渋沢は、ひょんなことから一橋家の家臣となり、明治維新後は大蔵省に入所。そこから実業家への道へと進んでいる。人生のターニングポイントにおいて、渋沢は何度となくキーパーソンの説得を試みた。  過激な攘夷活動を起こす際には、父に自分の思いを理解してもらおうと、夜を徹して議論を行った。そのときは、父から「仕方がないから今日からその身を自由にすることを許してやろう」という言葉を引き出している。  この議論においては、「日本が大変なときに農民などしている場合ではない」という渋沢の意見と、「農民には農民のやるべきことがある」という父の意見が衝突。渋沢は父の反対意見に対して、こんな言い回しをした。 「なるほど、父上のおっしゃる所は一応ごもっともだけれども、日頃、あなたが世のなりゆきをお嘆きなさるのも私と同じ思いで、あるいはその思いは一層深いようにもうかがっております」  まずは、相手の言い分をきちんと受け止める。意見の違いが大きいほど「いや……」と最初からさえぎってしまいがちだが、それだと合意には至りにくい。相手の意見を尊重する姿勢を見せて初めて、相手はこちらの言うことに耳を傾け始めるのだ
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気持ちは同じであることを強調
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